法律コラム

フリーランスへの支払期日・単価設定は適正ですか?―最新の勧告事例から学ぶ「支払遅延」と「買いたたき」―

よくある相談例

  1. フリーランスへの報酬について、少額の場合、あらかじめ定めた支払期日を過ぎてから翌月以降にまとめて支払っています。問題はありませんか?
  2. フリーランスから単価見直しの相談を受けていますが、従来どおりの単価で発注を続けています。フリーランス法上問題になるのでしょうか?
  3. 材料費、人件費、燃料費などが上がっていることは分かっていますが、フリーランスから強い異議がなければ、従来どおりの報酬額で発注してもよいでしょうか?

勧告事例の概要

2026年6月24日、公正取引委員会は、家庭用電気機械器具等の小売業等を行う事業者に対し、フリーランス法に基づく勧告を行いました。

本件では、同社が、顧客から請け負ったエアコンの設置工事、パソコンの設定等のサポート、トイレ等のリフォーム工事等をフリーランスに委託していたところ、主に以下の3点が問題とされました。

  • フリーランス10名に対し、報酬額が5万円未満の場合、フリーランスから要請があった場合を除き、あらかじめ定められた支払期日までに報酬を支払っていなかったこと
  • エアコン設置等の工事について、コスト上昇分を報酬額に反映する必要性についてフリーランスと十分な協議を行うことなく、一方的に従来どおりの報酬額を定めていたこと
  • フリーランスに責任がないにもかかわらず、報酬から「事務手数料」「業務委託管理料」「照合明細費用」として合計2,472,995円を差し引いていたこと

公正取引委員会は、これらの行為について、フリーランス法上の、①期日における報酬支払義務、②買いたたき禁止、③報酬の減額禁止に違反すると判断しました。

公正取引委員会による勧告事例の詳細は、こちら

違反行為の解説―支払期日と単価設定のどこに問題があったのか―

① 少額報酬でも、支払期日までに支払う必要がある

フリーランス法では、発注事業者がフリーランスに業務を委託した場合、給付を受領した日又は役務の提供を受けた日から60日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定め、その支払期日までに報酬を支払う必要があります。

ここで重要なのは、「翌月にまとめて支払うこと」自体が直ちに違法になるわけではないという点です。

例えば、月末締め翌月末払いなど、あらかじめ定めた支払期日がフリーランス法上許容される範囲内にあり、その期日までに支払っているのであれば、通常、それ自体が直ちに違法となるわけではありません。

これに対し、問題となるのは、少額であることなどを理由に、あらかじめ定めた支払期日を過ぎても支払わない運用です。

本件でも、公正取引委員会は、報酬額が5万円未満である場合に、フリーランスから要請がない限り、あらかじめ定められた支払期日までに報酬を支払っていなかったことを問題としています。

したがって、少額報酬について、一定額に達するまで支払わない、フリーランスから要請があった場合だけ支払う、社内処理の都合で支払期日後に繰り越すといった運用は、フリーランス法上問題となる可能性があります。

② コスト上昇時に従来単価を維持する場合は、十分な協議が必要

今回の勧告事例で特に重要なのは、コスト上昇分を報酬額に反映する必要性について十分に協議しないまま、一方的に従来どおりの報酬額を定めた点が「買いたたき」として問題とされたことです。

フリーランス法では、フリーランスの給付内容と同種又は類似の内容の給付に対して通常支払われる対価に比べ、著しく低い報酬額を不当に定めることが禁止されています。

発注事業者としては、「従来どおりの単価でお願いしているだけ」「フリーランスから明確な値上げ要請が出ていない」「相手も引き続き受注している」と考えることがあります。

しかし、材料費、人件費、燃料費、移動費、外注費などが上昇しているにもかかわらず、報酬額への反映の必要性について十分に協議しないまま従来単価を維持すると、買いたたきと評価されるリスクがあります。

本件でも、公正取引委員会は、エアコン設置等の工事に係るコスト上昇分について、フリーランスとの十分な協議を行わず、一方的に従来どおりの報酬額を定めたことを、買いたたきに該当すると判断しています。

③「相手が異議を述べていない」だけでは十分ではない

フリーランスとの取引では、継続的な取引関係を維持するため、フリーランス側が報酬額について明確に異議を述べにくい場合があります。

そのため、発注事業者としては、「異議が出ていないから問題ない」と考えるのではなく、報酬額が実態に照らして適正か、コスト上昇分について協議する必要がないかを確認することが重要です。

もちろん、フリーランスからの希望額をそのまま受け入れる必要まではありません。

しかし、コスト上昇の内容や程度を確認せず、従来単価を一方的に維持することは避けるべきです。協議を行った場合には、協議日時、確認した資料、フリーランスからの説明内容、自社の判断理由などを記録化しておくことが望ましいといえます。

企業が注意すべき3つのポイント

ポイント1支払期日を過ぎる運用がないか確認する

まず、フリーランスへの報酬について、支払期日どおりに支払われているかを確認する必要があります。
特に、次のような運用がある場合は注意が必要です。

  • 少額報酬について、支払期日後に翌月以降へ繰り越している
  • 一定金額に達するまで支払わない
  • フリーランスから請求や要請があった場合だけ支払う
  • 顧客から入金があってから支払う
  • 社内処理が完了した時点で支払う

問題となるのは、「まとめて支払うこと」自体ではなく、法令上許容される支払期日又はあらかじめ定めた支払期日を過ぎてしまうことです。

そのため、契約書や発注書の支払条件だけでなく、実際の経理処理、締め処理、少額報酬の取扱いまで点検することが重要です。

ポイント2コスト上昇時には、単価見直しの要否を検討する

材料費、人件費、燃料費、移動費などが上昇している場合には、従来単価を維持してよいかを慎重に確認する必要があります。

特に、設置工事、配送、修理、現地作業、訪問サービスなど、フリーランス側で交通費、燃料費、部材費、人件費等を負担している取引では、コスト上昇が報酬額の相当性に影響しやすいといえます。

フリーランスから明確な値上げ要請がない場合でも、取引内容や市場環境からコスト上昇が明らかな場合には、必要に応じて協議の機会を設けることが望ましいです。

ポイント3単価協議の経緯を記録に残す

単価見直しの協議では、フリーランスの要望をそのまま受け入れる必要まではありません。

もっとも、十分な協議を行ったことを後から説明できるよう、協議の経緯を記録化しておくことが重要です。
例えば、以下の内容を残しておくことが考えられます。

  • 協議を行った日時
  • フリーランスから示されたコスト上昇の内容
  • 確認した資料や市場価格
  • 自社が提示した単価案
  • 合意に至った内容
  • 希望額を受け入れなかった場合の理由

フリーランス法対応では、契約書上の記載だけでなく、実際にどのような協議を行い、どのような根拠で報酬額を定めたのかが重要になります。

フリーランス法対応は、実務点検から始まります

今回の勧告事例は、フリーランス法対応において、支払期日と単価設定の運用が重要であることを示したものといえます。

特に、少額報酬を支払期日後に繰り越している、一定額に達するまで支払わない、コスト上昇後も十分な協議なく従来単価を維持しているといった運用がある企業は注意が必要です。

フリーランス法への対応は、契約書や発注書のひな型を整えるだけで完結するものではありません。発注、請求、支払、単価改定の各フローを、実際の運用に即して点検することが重要です。

弁護士法人かける法律事務所では、フリーランスとの取引を行う企業に向けて、フリーランス法対応に関するご相談を承っております。

  • 業務委託契約書のリーガルチェック
  • 発注書、明示事項、支払条件の整備
  • 支払フロー、経理処理の適法性点検
  • 報酬体系、単価改定ルールの見直し支援
  • 価格協議・単価交渉ルールの整備
  • 社内研修の実施
  • 公正取引委員会対応のサポート

「自社の支払運用に問題がないか確認したい」
「単価改定の協議方法を整理したい」
「フリーランス法対応を実務ベースで点検したい」

といった段階からでもご相談いただけます。お気軽にお問い合わせください。

野呂 朱里

このコラムの執筆者

弁護士野呂 朱里Akari Noro

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