法律コラム

フリーランス新法の最新勧告事例を解説―無償の体験レッスンはなぜ問題となったのか―

よくある相談例

  1. フリーランスに無料セミナーや体験イベントを担当してもらっています。報酬を支払わなくても問題ありませんか?
  2. 新規顧客獲得のため、フリーランスに無料でサンプル作成やお試し業務を依頼しています。本人も了承していますが問題はありますか?
  3. 「営業活動の一環だから」「将来の受注につながるから」と考え、フリーランスに無償で協力してもらうことがあります。フリーランス新法上問題になるのでしょうか?

勧告事例の概要

2026年5月19日、公正取引委員会は、音楽教室を運営する事業者に対し、フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)に基づく勧告を行いました。

本件では、同社がフリーランス講師1,674名に対し、入会前の受講希望者向けの体験レッスンを無償で行わせていたことが問題となりました。

公正取引委員会は、この行為について、フリーランス新法が禁止する「不当な経済上の利益の提供要請」に該当すると判断し、体験レッスンに相当する対価の支払等を勧告しました。

今回の勧告は、フリーランス新法施行後における「不当な経済上の利益の提供要請」に関する重要な事例として注目されています。

公正取引委員会による勧告事例の詳細は、 こちら

違反行為の解説―不当な経済上の利益の提供要請とは―

フリーランス新法では、発注事業者がフリーランスに対し、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることによって、フリーランスの利益を不当に害することを禁止しています。

今回問題となった体験レッスンは、受講者の入会を促進するために実施されるものであり、事業者の営業活動の一環といえます。

そのため、

  • 事業者は顧客獲得の利益を受ける
  • フリーランス講師は役務を提供する
  • しかし報酬は支払われない

という状況になっていました。

公正取引委員会は、このような取引について、発注事業者が自己の利益のためにフリーランスへ無償で役務提供をさせているものと判断したものと考えられます。

実務上は、

  • 無料セミナー
  • 無料体験会
  • 無料イベント出演
  • 無料サンプル作成
  • 無料トライアル業務
  • 無料デザイン提案

なども、内容によっては同様の問題が生じる可能性があります。

企業が注意すべき3つのポイント

ポイント1「無償の協力」がないか確認する

まずは、自社がフリーランスに対し、

  • 無料対応
  • 無償協力
  • 営業支援
  • プロモーション活動

などを依頼していないか確認することが重要です。

「体験版だから」「お試しだから」といった理由であっても、発注事業者の利益につながる役務提供であれば問題となる可能性があります。

まずは、自社の取引の中に無償で依頼している業務がないか点検することが重要です。

ポイント2本人の同意があっても安心できない

フリーランス本人が了承している場合でも、それだけで適法になるわけではありません。

フリーランス新法は、発注事業者とフリーランスとの間の立場の差を踏まえ、不当な取引を防止するための法律です。

そのため、

  • 本人が納得している
  • 長年の取引関係がある
  • 特に異議が出ていない

といった事情があったとしても、発注事業者の利益のために無償で役務を提供させていると評価される場合には、法違反となる可能性があります。

ポイント3「営業活動だから無償でよい」と考えない

今回の勧告事例は、「営業活動だから無償でよい」という考え方が必ずしも通用しないことを示した事例ともいえます。

顧客獲得や売上向上につながる活動については、

  • 誰のための活動なのか
  • フリーランスにどのような役務提供を求めているのか
  • 報酬を支払うべき業務に当たらないか

を慎重に検討する必要があります。

特に、体験会、無料セミナー、サンプル作成、イベント出演などは、営業活動の一環として無償で依頼されることもありますが、内容によってはフリーランス新法上問題となる可能性があるため注意が必要です。

フリーランス新法対応は、実務点検から始まります

今回の勧告事例は、「営業活動の一環だから」「将来の受注につながるから」「本人も了承しているから」といった理由だけでは、無償の役務提供が正当化されない可能性があることを示したものといえます。

フリーランス新法への対応は、契約書の整備だけで完結するものではありません。発注内容、報酬体系、実際の運用など、取引全体を見直すことが重要です。

弁護士法人かける法律事務所では、フリーランスとの取引を行う企業に向けて、フリーランス新法対応に関するご相談を承っております。

  • 業務委託契約書のリーガルチェック
  • 無償業務やプロモーション業務の適法性点検
  • 発注フロー・報酬体系の見直し支援
  • 社内研修の実施
  • 公正取引委員会対応のサポート

「自社の運用に問題がないか確認したい」「無償対応が法令違反にならないか点検したい」といった段階からでもご相談いただけます。お気軽にお問い合わせください。

細井 大輔

このコラムの執筆者

代表弁護士細井 大輔Daisuke Hosoi

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