法律コラム

公正取引委員会のフリーランス新法勧告事例まとめ(3事例)―企業が注意すべき取引ルールを弁護士が解説―

フリーランス新法の施行と企業の取引ルール

2024年11月に施行されたフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、フリーランスとの取引の適正化を目的として制定された法律です。

フリーランスとの取引を行う企業に対しては、取引条件の明示、報酬の支払期限、一定の禁止行為など、さまざまなルールが定められています。

公正取引委員会は、フリーランス新法の施行後、すでに複数の勧告事例を公表しています。これらの事例を見ると、企業のフリーランス取引において特に問題となりやすいポイントが見えてきます。

本記事では、公正取引委員会が公表した勧告事例のうち、企業実務への影響が大きい3つの事例を取り上げ、フリーランス新法対応のポイントを解説します。

公正取引委員会が注目している3つのポイント

公表されている勧告事例を見ると、フリーランス新法において特に問題となりやすいのは、次の3つの類型です。

  1. 取引条件の明示義務
  2. 報酬の支払期限(60日ルール)
  3. 不当な経済上の利益の提供要請

以下では、それぞれのポイントについて、実際の勧告事例をもとに解説します。

① 取引条件を明示していなかった事例(出版・制作分野)

出版・制作分野において、出版社がフリーランスに対して原稿執筆、写真撮影、イラスト制作などの業務を委託した際、発注時に業務内容や報酬額、支払期日などの取引条件を明示していなかったとして、公正取引委員会が勧告を行った事例があります。

フリーランス新法では、発注事業者はフリーランスに業務を委託する際、次のような取引条件を書面または電子メールなどの電磁的方法により明示する義務があります。

  • 業務内容
  • 報酬の額
  • 支払期日
  • 発注日
  • 納品期日、場所
  • 検査完了日(検収がある場合)

出版・広告・制作分野では、「まず作業を始めてもらい、条件は後から調整する」という実務運用が見られることもあります。しかし、こうした運用はフリーランス新法の明示義務に違反する可能性があります。

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「出版・広告業界は要注意|フリーランス新法の勧告事例を弁護士が分析」

② フリーランスに無償の業務を行わせていた事例(教育・スクール分野)

音楽教室事業を行う事業者が、フリーランス講師に対して体験レッスンを無償で実施させていた事案について、公正取引委員会が勧告を行った事例があります。

体験レッスンは、受講者の入会を促進するための営業活動の一環であり、事業者の利益のための役務提供と評価されました。そのため、講師に対して無償で体験レッスンを行わせていたことが、フリーランス新法の禁止行為である「不当な経済上の利益の提供要請」に該当すると判断されました。

企業の実務では、

  • 体験レッスン
  • 無料イベント
  • プロモーション活動
  • 無料トライアル業務

などをフリーランスに依頼するケースもありますが、事業者の営業活動のために役務を提供させている場合には、無償とすることが問題となる可能性があります。

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「フリーランスに『無償の仕事』を依頼していませんか」

③ 報酬の支払が60日を超えていた事例(支払期限ルール)

電力関連事業を行う事業者が、フリーランスに対する報酬の支払期日を役務提供日から60日を超えて設定していた事案について、公正取引委員会が勧告を行った事例があります。

フリーランス新法では、発注事業者は、フリーランスから成果物の納品や役務の提供を受けた日から起算して、60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を定め、その期日までに報酬を支払う義務があります。

実務では、

  • 請求書受領日を基準に支払期日を設定する
  • 検収完了後に支払期日を設定する
  • 月末締め翌々月払いなどの長い支払サイトを採用する

といった運用が見られることがあります。しかし、これらの運用によって結果として支払日が役務提供日から60日を超えてしまう場合には、フリーランス新法違反となる可能性があります。

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「フリーランスへの報酬は60日以内に支払っていますか」

企業が確認しておくべきフリーランス取引の基本ルール

これらの勧告事例から、企業として特に注意すべきポイントは次の3つです。

  1. 発注時に取引条件を明示する
  2. フリーランスに無償業務を依頼しない
  3. 報酬は役務提供日から60日以内に支払う

これらはフリーランス新法の基本ルールであり、企業の取引実務が法令に適合しているかを確認することが重要です。

フリーランス新法対応は、実務点検から始まります

フリーランス新法への対応は、契約書の形式的な修正だけで完結するものではありません。取引条件の明示、無償業務の有無、報酬の支払期限など、発注から支払までの実務運用全体が法令に適合しているかを確認する必要があります。

弁護士法人かける法律事務所では、フリーランスとの取引を行う企業に向けて、フリーランス新法対応に関するご相談を承っております。

  • 業務委託契約・発注書のリーガルチェック
  • 発注フロー・支払フローの適法性点検
  • 取引条件の明示体制の整備
  • 社内研修の実施
  • 公正取引委員会対応のサポート

「自社のフリーランス取引が法律に適合しているか確認したい」「契約書や発注フローに問題がないか点検したい」といった段階からでもご相談いただけます。フリーランス新法への適切な対応を通じて、企業とフリーランス双方が安心して取引できる体制づくりを支援いたします。お気軽にお問い合わせください。

細井 大輔

このコラムの執筆者

代表弁護士細井 大輔Daisuke Hosoi

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