法律コラム

フリーランスの報酬を後から差し引いていませんか?―最新の勧告事例から学ぶ「報酬の減額禁止」―

よくある相談例

  1. フリーランスへの報酬から、振込手数料やシステム利用料を差し引いて支払っています。問題はありませんか?
  2. フリーランスとの取引に関する管理費やコンプライアンス対応費用の一部を負担してもらっています。フリーランス新法上問題になるのでしょうか?
  3. 業績悪化や予算削減を理由として、当初合意していた報酬額を見直し、減額して支払うことはできますか?

勧告事例の概要

2026年5月29日、公正取引委員会は、資料作成代行サービス等を行う事業者に対し、フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)に基づく勧告を行いました。

本件では、同社がフリーランスに対する報酬について、フリーランスに責任がないにもかかわらず、

  • 「コンプライアンス対応費用調整額」として計4,463,380円を差し引いていたこと
  • 報酬額の11分の1に相当する計1,055,754円を差し引いていたこと

が問題となりました。

公正取引委員会は、これらの行為がフリーランス新法における「報酬の減額禁止」に違反すると判断し、減額した合計5,519,134円の支払等を勧告しました。

今回の勧告は、フリーランス新法施行後における「報酬の減額禁止」に関する重要な事例として注目されています。

公正取引委員会による勧告事例の詳細は、こちら

違反行為の解説―なぜ「報酬の減額」が禁止されているのか―

フリーランス新法では、発注事業者が一定期間継続して業務委託を行う場合、フリーランスに責任がないにもかかわらず、あらかじめ定めた報酬額を減額することを禁止しています。

この規制は、発注事業者とフリーランスとの間に存在する立場の差を踏まえたものです。

フリーランスは、業務を完了した後に報酬額を一方的に引き下げられた場合であっても、取引継続への影響を懸念して異議を申し出にくい立場にあります。

そのため、フリーランス新法では、発注事業者の都合による一方的な減額を禁止し、適正な取引環境を確保しようとしています。

今回の事例では、発注事業者は、

  • コンプライアンス対応費用調整額
  • 報酬額の11分の1相当額

という名目で報酬を差し引いていました。

しかし、公正取引委員会は、フリーランス側に責任がないにもかかわらず報酬額を減額したものとして、「報酬の減額禁止」に違反すると判断しました。

重要なのは、減額の名目ではなく、実質的に報酬額を減らしているかどうかです。

例えば、

  • 協力金
  • 管理費
  • システム利用料
  • コンプライアンス対応費用
  • 振込手数料
  • 業績悪化による調整

などの名目であっても、フリーランスに責任がないにもかかわらず報酬額を減額している場合には、フリーランス新法上問題となる可能性があります。

企業が注意すべき3つのポイント

ポイント1「名目を変えた減額」になっていないか確認する

発注事業者の中には、

  • 管理費
  • システム利用料
  • 協力金
  • 教育費
  • コンプライアンス対応費用

などの名目で報酬から一定額を差し引いているケースがあります。

しかし、フリーランス新法では、名目ではなく実質が重視されます。

そのため、「○○費用」といった名称であっても、実質的に報酬額を減額していると評価される場合には、法違反となる可能性があります。

まずは、自社の取引において、報酬から何らかの費用を差し引く運用が行われていないか確認することが重要です。

ポイント2フリーランスが同意していても安心できない

フリーランス本人が減額に同意している場合であっても、直ちに問題がないとはいえません。

フリーランス新法は、発注事業者とフリーランスとの間の立場の差を踏まえ、不当な取引を防止するために設けられています。

そのため、

  • 本人が了承している
  • 長年の取引関係がある
  • 特に異議が出ていない

といった事情があったとしても、実質的に発注事業者の都合による減額と評価される場合には、法違反となる可能性があります。「相手が納得しているから大丈夫」と考えるのではなく、そもそも減額が認められる場面なのかを確認することが重要です。

ポイント3発注事業者の都合による減額に注意する

発注事業者の事情による、

  • 業績悪化
  • 予算削減
  • 利益率の低下
  • 顧客からの値下げ要請

などを理由として、当初合意した報酬額を後から引き下げることは問題となる可能性があります。

今回の勧告事例も、フリーランス側に責任がないにもかかわらず、報酬から一定額を差し引いていたことが問題とされました。特に、業務完了後や納品後に報酬額を変更する運用はリスクが高いため注意が必要です。

フリーランス新法対応は、実務点検から始まります

今回の勧告事例は、「管理費」「協力金」「コンプライアンス対応費用」などの名目であっても、実質的に報酬を減額していると評価されれば、フリーランス新法違反となる可能性があることを示したものといえます。

フリーランス新法への対応は、契約書の整備だけで完結するものではありません。報酬体系、請求・支払方法、各種費用負担のルールなど、実際の運用を含めて確認することが重要です。

弁護士法人かける法律事務所では、フリーランスとの取引を行う企業に向けて、フリーランス新法対応に関するご相談を承っております。

  • 業務委託契約書のリーガルチェック
  • 報酬体系や費用負担ルールの適法性点検
  • 発注フロー・支払フローの見直し支援
  • 社内研修の実施
  • 公正取引委員会対応のサポート

「自社の費用負担ルールに問題がないか確認したい」「報酬の減額に当たる可能性がないか点検したい」といった段階からでもご相談いただけます。お気軽にお問い合わせください。

細井 大輔

このコラムの執筆者

代表弁護士細井 大輔Daisuke Hosoi

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