法律コラム

Q&A<独占禁止法・下請法対応>下請法の60日ルールとは?下請法が定める支払期日のルールを弁護士が解説します。

2023.12.13

よくある相談例:

  1. 下請法の60日ルールの内容を知りたい。
  2. 下請法に違反しない支払ルールを作りたい。
  3. 下請法が定める支払ルールに違反すると、どうなりますか?
  4. 公正取引委員会から支払期日を是正するように指導されています。

1. 下請法とは?

 下請法とは、「下請代金支払遅延等防止法」の略称で、下請取引の公正化や下請事業者 の利益保護を目的としており、中小企業政策の重要な柱となっている法律です。

 下請法では、親事業者による下請事業者に対する優越的地位の濫用行為を取り締まるため、①親事業者の義務や②親事業者の禁止事項を定めています。

下請法の対象取引は、「Q&A<企業法務・顧問契約>下請法とは?下請法の基本を弁護士が解説します。」を参考にしてください。

2. 下請法が定める支払期限のルール(60日ルール)とは?

 下請法では、親事業者が物品等を受領した日(役務提供委託の場合は,役務が提供された日)から起算して60日以内に定めた支払期日までに、下請代金を全額支払わなければならないとされています(下請法2条の2第1項、4条1項2号)。

 これを、下請法における60日ルールといいます。下請取引の性格から、親事業者が下請代金の支払期日を不当に遅く設定するおそれがあるため、下請事業者の利益を保護することを目的としています。

下請法2条の2第1項

 下請代金の支払期日は、親事業者が下請事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、親事業者が下請事業者の給付を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした日。次項において同じ。)から起算して、六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

下請法4条1項

 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第一号及び第四号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。

二 下請代金をその支払期日の経過後なお支払わないこと。

3. 下請法が定める支払期限のルール(60日ルール)に違反すると、どうなる?

 まず、下請法が定める支払期限のルール(60日ルール)に違反する支払期限が定められたとしても、給付の受領日から起算して60日を経過した日の前日が支払期日と定められたものとみなされます(下請法2条の2第2項)。

 また、下請代金の支払遅延が発生した場合、親事業者は、下請事業者に対して、遅延日数に応じて、未払金額に対する年14.6%の割合による遅延損害金を支払わなければなりません。

 さらに、公正取引委員会や中小企業庁による報告・立入検査の対象となるとともに、公正取引委員会による勧告や公表(事業者名、違反事実の概要、勧告の概要等)の対象となります。しかも、下請法違反の内容によっては、刑事罰(50万円以下の罰金・両罰規定)の対象にもなります。

 コンプライアンス経営やESG経営が求められる現代社会において、下請法に違反しないことも企業が持続的に成長し続けるためには、必要となってきます。

4. 下請法が定める支払期限のルール(60日ルール)の注意点

① 60日の起算日

 親事業者は、親事業者が下請事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、受領日から起算して60日以内で支払期限を定めなければなりません。

 この受領日とは、下請事業者から物品等又は情報成果物を受領した日を意味し、役務提供委託の場合、下請事業者が役務を提供した日を意味します。また、60日以内を計算する際、受領日の翌日ではなく、受領日から起算します。

 60日の起算日について、検査から60日以内ではないこと、また、請求書の発行日から60日以内ではないことに注意する必要があります。

 また、役務提供契約でも、役務の完了報告書が届いた時点ではなく、役務を完了した日が支払期日の起算日となります。

 60日ルールの起算日を間違えないように注意する必要があります。

② 下請事業者が同意・合意していても、下請法違反となること

 契約条件は、原則として、取引当事者の合意で定めることが可能です。もっとも、下請法の性質上、取引当事者間で同意・合意していても、下請法違反は免責されません。つまり、下請事業者が60日を超えて支払期限を定めることに合意(同意)していても、下請法違反となることについて注意する必要があります。

③ 下請事業者の請求書の提出遅れでも下請法違反となること

 公正取引委員会のウェブサイトでも説明されていますが、「下請事業者からの請求書の提出のあるなしにかかわらず、受領後60日以内に定めた支払期日までに下請代金を支払う必要がある。」とされており、下請事業者の請求書の提出が遅れたとしても、受領後60日以内に定めた支払期日までに下請代金を支払う必要があります。

 そのため、親事業者が、社内の手続上、下請事業者からの請求書を要求する場合、下請事業者が請求額を集計し通知するための十分な期間を確保しておくことが望ましく、下請事業者からの請求書の提出が遅れる場合でも、速やかに提出するよう督促し、支払遅延とならないように社内体制を準備する必要があります。

④ 60日ルールの例外

 下請法は60日ルールを定めていますが、公正取引委員会が発行するマニュアル等において、60日ルールの例外(月単位の締切制度、情報成果物作成委託における例外的な支払期日の起算日、役務提供委託における例外的な支払期日の起算日、金融機関の休業日等)も例示されています。

 そのため、現在の運用が形式的に60日ルールに違反すると思われる場合でも、個別にケースを検討すれば、60日ルールに違反していない可能性もあります。

 下請法に違反するかどうかは、形式的に判断するだけでなく、個別の取引ごとに検討することによって下請法違反を回避できる場合もあります。

5. 下請法対応は法律事務所(弁護士)に依頼できます。

 下請法対応は、法律事務所(弁護士)に相談し、依頼できます。企業法務や紛争・訴訟対応に精通している弁護士だからこそ、できることが多くあります。特に、顧問契約サービスを利用すれば、下請法対応について、よりリーズナブルで、迅速かつ適切な対応が可能となり、円滑な取引の促進につながります。

具体的な相談例:

  1. 下請法の対象となる取引かどうか判断できない。
  2. 親事業者から下請法に違反する条件を提示されているが対応方法がわからない。
  3. 下請法に違反しないための仕組みをつくりたい。
  4. 公正取引委員会から下請法違反について指導されている。
  5. コンプライアンス研修(下請法)を開催したい。

6. 下請法対応は、弁護士法人かける法律事務所にご相談ください。

 弁護士法人かける法律事務所では、顧問契約(企業法務)について、常時ご依頼を承っております。企業法務に精通した弁護士が、迅速かつ的確にトラブルの解決を実現します。お悩みの経営者の方は、まずは法律相談にお越しください。貴社のお悩みをお聞きし、必要なサービスをご提供いたします。

 顧問契約サービスでは、下請法対応もリーズナブルに、かつ、迅速に対応できます。コンプライアンス研修(下請法)も引き受けていますので、是非一度お問い合わせください。

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