法律コラム

Q&A<独占禁止法・下請法対応>下請法とは?下請法の基本を弁護士が解説します。

2023.11.29

よくある相談例:

  1. 下請法の対象となる取引ですか?
  2. 公正取引委員会から下請法違反を是正するように指導されています。
  3. 取引先業者から下請法に違反していると指摘されています。
  4. 下請法に違反した場合、どうなりますか?

1. 下請法とは?

 下請法とは、「下請代金支払遅延等防止法」の略称で、下請取引の公正化や下請事業者 の利益保護を目的としており、中小企業政策の重要な柱となっている法律です。

 下請法では、親事業者による下請事業者に対する優越的地位の濫用行為を取り締まるため、①親事業者の義務や②親事業者の禁止事項を定めています。

2. 優越的地位の濫用(独占禁止法)との関係は?

 独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)では、不公正な取引方法として、優越的地位の濫用を禁止しています。

  優越的地位の濫用とは、自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が、取引の相手方に対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らし不当に不利益を与える行為をいいます。

 下請法は、独占禁止法を補完する役割を有し、迅速かつ効果的に下請事業者を保護するため、適用対象を明確にして、違反行為の類型を具体的に法定し、独占禁止法と比較して、簡易な手続を規定しています。

優越的地位の濫用の具体例:

  • 押し付け販売、減額、受領拒否、協賛金の負担、不当な返品、従業員の派遣要請

3. 最近の下請法の違反事例

 公正取引委員会は、令和4(2023)年6月、家電量販店に対して、店舗で販売する家庭電気製品等を製造委託している下請事業者2社に「物流協力金」等の名目で代金7310万円を不当に減額していたとして、下請代金の減額の禁止を定めた下請法に違反するとして再発防止等に取り組むよう勧告しました。

勧告事例の詳細は、こちら

令和4(2022)年度の運用状況

勧告件数:6件
指導件数:8,665件
下請事業者が被った不利益の原状回復の状況:親事業者180名から、下請事業者6,294名に対し、下請代金の減額分の返還等総額11億3465万円相当の原状回復が行われました。

下請法の運用状況は、こちら

4. 下請法の対象となる取引とは?

 下請法は、①取引当事者の資本金の区分と②取引内容(製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託)の2つの側面から定め、この2つの条件を満たす取引に下請法が適用されます。

製造委託の具体例:

  • 自動車メーカーが、販売する自動車の部品の製造を部品メーカーに委託すること
  • 精密機器メーカーが、製造を請け負う精密機器の部品の製造を部品メーカーに委託すること

修理委託の具体例:

  • 自動車ディーラーが、ユーザーから請け負う自動車の修理作業を修理業者に委託すること
  • 自社工場の設備等を自社で修理している工作機器メーカーが、その設備の修理作業の一部を修理業者に委託すること

情報成果物作成委託の具体例:

  • 不動産会社が、販売用住宅の建設に当たり、当該住宅の建設設計図の作成を設計会社に委託すること
  • 工作機械メーカーが、ユーザーから製造を請け負う工作機械に内蔵するプログラムの開発をソフトウェア開発業者に委託すること

役務提供委託の具体例:

  • ビルメンテナンス業者が、請け負うメンテナンスの一部たるビルの清掃を清掃業者に委託すること
  • ビル管理会社が、ビルオーナーから請け負うビルメンテナンス業務をビルメンテナンス業者に委託すること

5. 親事業者の義務

下請法では、下請事業者を保護するため、親事業者の義務を定めています。

  1. 書面の交付義務(発注の際は直ちに3条書面を交付すること)
  2. 支払期日を定める義務(下請代金の支払期日を給付の受領後60日以内に定めること)
  3. 書類の作成・保存義務(下請取引の内容を記載した書類を作成し、2年間保存すること)
  4. 遅延利息の支払義務(支払が遅延した場合は遅延利息を支払うこと)

6. 親事業者の禁止行為の具体例

下請法では、下請事業者を保護するため、親事業者の禁止行為を定めています。

  1. 受領拒否
  2. 下請代金の支払遅延
  3. 下請代金の減額
  4. 買いたたき
  5. 購入・利用強制
  6. 報復措置
  7. 有償支給原材料等の対価の早期決済
  8. 割引困難な手形の交付
  9. 不当な経済上の利益の提供要請
  10. 不当な給付内容の変更及び不当なやり直し

7. 下請法に違反する場合のリスク

下請法に違反する場合、以下のリスクがあります。

  1. 公正取引委員会・中小企業庁による報告・立入検査
  2. 公正取引委員会による勧告と公表(事業者名、違反事実の概要、勧告の概要等)
    →勧告の具体例:違反行為の取りやめ・現状回復措置
  3. 罰則(50万円以下の罰金・両罰規定)
    →A)書面の交付義務違反
     B)書類の作成及び保存義務違反
     C)報告徴収に対する報告拒否・虚偽報告
     D)立入検査の拒否・妨害・忌避

8. 下請法対応は法律事務所(弁護士)に依頼できます。

 下請法対応は、法律事務所(弁護士)に相談し、依頼できます。企業法務や紛争・訴訟対応に精通している弁護士だからこそ、できることが多くあります。特に、顧問契約サービスを利用すれば、下請法対応について、よりリーズナブルで、迅速かつ適切な対応が可能となり、円滑な取引の促進につながります。

具体的な相談例:

  1. 下請法の対象となる取引かどうか判断できない。
  2. 親事業者から下請法に違反する取引条件を提示されている。
  3. 下請法に違反しないための仕組みをつくりたい。
  4. 公正取引委員会から下請法違反を指導されている。
  5. コンプライアンス研修(下請法)を開催したい。

9. 下請法対応は、弁護士法人かける法律事務所にご相談ください。

 弁護士法人かける法律事務所では、顧問契約(企業法務)について、常時ご依頼を承っております。企業法務に精通した弁護士が、迅速かつ的確にトラブルの解決を実現します。お悩みの経営者の方は、まずは法律相談にお越しください。貴社のお悩みをお聞きし、必要なサービスをご提供いたします。

 顧問契約サービスでは、下請法対応もリーズナブルに、かつ、迅速に対応できます。コンプライアンス研修(下請法)も引き受けていますので、是非一度お問い合わせください。

細井 大輔

このコラムの執筆者

代表弁護士細井 大輔Daisuke Hosoi

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