
はじめに
企業にとって、コンプライアンス違反を未然に防ぐことは重要な経営課題の一つです。
ハラスメント、不正な経費精算、情報漏洩、社内ルール違反など、コンプライアンス上の問題は、必ずしも「悪いことをしよう」という明確な意図から発生するとは限りません。
「これくらいなら大丈夫だろう」
「昔からこのようにやっている」
「誰にも迷惑をかけていない」
「上司も何も言わないから問題ない」
といった日常の判断や思い込みが、コンプライアンス違反につながることもあります。
そのため、コンプライアンス違反を防ぐには、単に「法律やルールを守りましょう」と呼びかけるだけでは十分ではありません。
従業員が適切に判断・行動できるように、企業として仕組みや職場環境を整えていくことが重要です。
本稿では、コンプライアンス違反を防ぐために企業が取り組むべき5つの予防策について解説します。
目次
予防策 ①法令や社内ルールを整備する
第一に、従業員が守るべきルールを明確にすることが必要です。
企業活動には、労務管理、ハラスメント、個人情報・機密情報、経費精算、SNSの利用など、さまざまなコンプライアンス上のリスクがあります。
必要に応じて、就業規則や各種社内規程、マニュアルなどを整備し、従業員が「何を守らなければならないのか」を確認できる状態にしておくことが重要です。
もっとも、細かなルールを増やせば増やすほど、コンプライアンス違反を防げるわけではありません。
ルールを作ること自体が目的になってしまうと、実際の業務と合わなくなったり、従業員が内容を理解できなくなったりすることもあります。
自社の業種、規模、業務内容や実際に生じているリスクを踏まえ、必要なルールを分かりやすく整備することが大切です。
予防策 ②ルールを「作る」だけでなく、社内に周知する
社内規程やマニュアルを整備しても、従業員がその存在や内容を知らなければ、コンプライアンス違反の予防には十分につながりません。
重要なのは、「ルールがあること」と「現場で理解されていること」は別であるという点です。
例えば、
「経費精算について、どこまでが認められているのか」
「顧客情報をどのように取り扱うべきなのか」
「ハラスメントを見聞きした場合、誰に相談すればよいのか」
といったことを、従業員が具体的に理解しているでしょうか。
ルールを社内に周知するとともに、「なぜそのルールが必要なのか」まで伝えることが重要です。
理由を理解することで、ルールに書かれていない場面に直面した場合にも、適切な判断につながりやすくなります。
予防策 ③相談・報告できる体制をつくる
コンプライアンス違反を防ぐうえで重要なのが、従業員が迷ったときや問題に気づいたときに、相談・報告できる環境を整えることです。
現場では、すべての問題について明確な答えがあるとは限りません。
そのような場合に、
「立ち止まる」
「確認する」
「相談する」
という行動ができることが重要です。
反対に、「こんなことを相談したら怒られる」「大ごとにしたくない」と感じる職場では、問題が表面化しないまま深刻化するおそれがあります。
相談窓口や報告ルートを整備するだけでなく、日頃から「迷ったら相談してよい」「問題は早い段階で報告する」という意識を職場に浸透させることが重要です。
予防策 ④管理職・役職者へのコンプライアンス教育を行う
コンプライアンス違反の予防において、管理職・役職者は重要な役割を担います。
管理職は、自らルールを守るだけではなく、部下の問題行動に気づいたり、相談を受けたりする立場でもあります。
例えば、部下の不適切な言動を知りながら、
「本人同士の問題だから」
「これくらいなら問題ない」
「自分がやったことではない」
と放置すれば、問題がさらに大きくなる可能性があります。
また、管理職自身の言動が、職場における一つの「基準」になります。
管理職がルールを軽視すれば、部下も「この程度なら許される」と考えるかもしれません。
そのため、管理職・役職者には、法律やルールの知識だけではなく、問題に直面したときに何を確認し、どのように判断し、誰に相談・報告するのかまで理解してもらうことが重要です。
予防策 ⑤研修を継続し、実際の事例から考える機会をつくる
コンプライアンス教育は、一度研修を実施すれば終わりというものではありません。
法律や社会環境は変化しますし、企業の事業内容や組織、人員構成も変わっていきます。
また、コンプライアンス研修というと、講師から法律や禁止事項について説明を受けるだけの研修になりがちです。
しかし、実際の現場では、
「この場合はどうすればよいのか」
「どこからが問題なのか」
「問題を知った管理職は何をすべきなのか」
といった判断が必要になります。
そのため、具体的な事例を題材として、「どのようなリスクがあるのか」「なぜ問題が起きたのか」「どう予防・対応すべきなのか」を考える研修が有効です。
実際の業務に近いケースを通じて考えることで、コンプライアンスを単なる知識ではなく、日々の判断や行動につなげることができます。
まとめ コンプライアンス違反を防ぐには「仕組み」と「人」の両方が重要
コンプライアンス違反を防ぐためには、企業として次の5つの取組みが重要です。
- 法令や社内ルールを整備する
- ルールを社内に周知する
- 相談・報告できる体制をつくる
- 管理職・役職者へのコンプライアンス教育を行う
- 研修を継続し、実際の事例から考える機会をつくる
規程やマニュアルといった「仕組み」を整えることはもちろん重要です。
しかし、最後に判断し、行動するのは「人」です。
従業員や管理職が、問題に直面したときに「これくらい大丈夫」と自己判断するのではなく、立ち止まり、確認し、必要に応じて相談することができる組織をつくることが、コンプライアンス違反の予防につながります。
コンプライアンスを「知識」から「現場の行動」へ
弁護士法人かける法律事務所では、企業の管理職を対象とした「管理職コンプライアンス実践研修」を実施しています。
コンプライアンス研修で重要なのは、「これは違反です」「これは禁止されています」という知識を伝えるだけではありません。
実際の現場では、管理職自身が、
「この対応にはどのようなリスクがあるのか」
「部下の問題行動に気づいたら、どうすればよいのか」
「自分だけで判断してよいのか、それとも会社に相談すべきなのか」
と考え、適切に行動することが求められます。
当事務所の研修では、実際の紛争・トラブル事例などを踏まえながら、ハラスメント、労務管理、情報管理、SNS・ネット対応など、管理職が直面しやすいテーマを取り上げ、現場で必要となる「判断力」と「対応力」を身につけることを重視しています。
特に、
- 社内規程は整備しているが、現場に十分浸透しているか不安がある
- コンプライアンス研修が、法律や禁止事項の説明だけになっている
- 管理職によって問題発生時の判断や対応にばらつきがある
- 部下の問題行動を管理職が見過ごさない組織にしたい
- 自社の業種や実際の課題に合わせた研修を実施したい
といった企業様には、管理職への実践的なコンプライアンス教育をおすすめします。
コンプライアンス違反を防ぐためには、ルールを作るだけでなく、そのルールを現場で適切な判断と行動につなげることが重要です。
弁護士法人かける法律事務所では、企業の業種・実情・課題に応じたコンプライアンス研修をご提案しています。
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