
はじめに
企業がコンプライアンス体制を整え、研修や教育を行っていても、コンプライアンス違反を完全になくすことは容易ではありません。
ハラスメント、不正な経費精算、情報漏洩、社内ルール違反など、企業ではさまざまな問題が発生する可能性があります。
重要なのは、問題が発生したときに、
「できるだけ大ごとにしたくない」
「社内だけで処理すればよい」
「もう解決したので報告しなくてもよい」
などと考えて、問題を放置したり、対応を遅らせたりしないことです。
コンプライアンス違反は、発生した事実そのものだけでなく、その後の企業の対応によって問題がさらに大きくなることがあります。
本稿では、コンプライアンス違反が発生した場合に企業が押さえておきたい初動対応と再発防止の基本的な考え方について解説します。
目次
まずは速やかに報告し、問題を隠さない
コンプライアンス違反が発生した場合、まず重要なのは、問題を把握した従業員や管理職が速やかに社内へ報告することです。
例えば、情報漏洩が発生したにもかかわらず、
「相手に削除してもらえば大丈夫だろう」
と現場だけで処理してしまえば、会社として必要な対応を検討することができません。
また、部下の問題行動を知った管理職が、
「本人に注意したから、会社には報告しなくてもよい」
と判断することも適切ではない場合があります。
問題が小さい段階で報告されれば、会社として早期に対応できる可能性があります。一方、報告が遅れることで被害が拡大したり、事実関係の確認が難しくなったりすることもあります。
そのため、日頃から「問題が起きたら隠さない」「迷ったら早めに相談・報告する」という意識を社内で共有しておくことが重要です。
事実関係を正確に確認する
問題の報告を受けた後は、何が起きたのかを正確に確認する必要があります。
このとき重要なのは、最初から「誰が悪いのか」を決めつけないことです。
例えば、
- いつ、どこで問題が発生したのか
- 誰が関係しているのか
- 具体的にどのような行為があったのか
- どのような経緯で問題が発生したのか
- メール、チャット、書類、映像などの資料があるか
- どの範囲まで影響が生じているのか
などを整理し、客観的な事実を確認していきます。
ハラスメントであれば関係者からのヒアリングが必要になることがありますし、情報漏洩であれば、どの情報が、誰に、どのような方法で漏洩したのかを確認する必要があります。
事案によって確認すべき事項は異なります。
思い込みや一方当事者の説明だけで判断するのではなく、必要な資料や関係者の話を確認しながら、事実関係を整理することが重要です。
被害や影響の拡大を防止する
事実確認と並行して、被害や影響が拡大しないための対応も必要です。
例えば、情報漏洩であれば、誤送信先への削除依頼や情報へのアクセス停止など、状況に応じた対応を速やかに検討する必要があります。
ハラスメントなどの問題では、関係者の状況を確認し、必要に応じて接触を避けるなどの対応を検討する場合もあります。
不正行為が継続しているのであれば、それ以上の被害が発生しないようにすることも必要です。
初動対応では、すべての事実関係が明らかになるまで何もしないのではなく、現時点で把握している状況から、被害や影響の拡大を防ぐために何が必要なのかを考えることが重要です。
事実関係に応じて適切な対応を検討する
事実関係を確認した後は、その内容に応じて会社としての対応を検討します。
例えば、
- 問題行為を行った従業員への指導や懲戒処分
- 被害を受けた従業員への対応
- 顧客や取引先への説明・対応
- 関係部署への情報共有
- 社内規程や業務フローの見直し
などが考えられます。
もっとも、どのような対応が適切かは、問題の内容や重大性によって異なります。
特に懲戒処分などを検討する場合には、事実関係や就業規則等を確認したうえで、処分の必要性や相当性を慎重に検討する必要があります。
重大な事案や法的判断を伴う事案については、現場や管理職だけで判断せず、必要に応じて弁護士などの専門家へ相談することも重要です。
「誰が悪かったか」だけで終わらせず、再発防止につなげる
コンプライアンス違反への対応は、問題を起こした本人への対応を行えば終わりではありません。
なぜ、その問題が起きたのかを確認することが重要です。
例えば、情報漏洩がメールの誤送信によって発生した場合でも、
「送信した従業員が注意不足だった」
だけで終わらせてしまえば、同じような問題が再び発生する可能性があります。
「送信前の確認方法に問題はなかったか」
「情報管理のルールは周知されていたか」
「業務が特定の従業員に集中していなかったか」
など、問題が発生した背景まで確認する必要があります。
ハラスメントや不正行為についても同様です。
個人の問題だけではなく、社内ルール、管理体制、職場環境、教育・研修などに改善すべき点がなかったかを検討します。
そのうえで、必要に応じてルールや業務フローの見直し、社内周知、管理職への教育、コンプライアンス研修などにつなげることが重要です。
まとめ 問題発生後の対応もコンプライアンスの一部
コンプライアンス違反が発生した場合には、企業として次のような流れを意識することが重要です。
- 速やかに報告し、問題を隠さない
- 事実関係を正確に確認する
- 被害や影響の拡大を防止する
- 事実関係に応じて適切な対応を検討する
- 原因を分析し、再発防止につなげる
コンプライアンスというと、「違反を起こさないこと」に目が向きがちです。
しかし、万が一問題が発生したときに、会社や管理職がどのように対応するのかも、企業のコンプライアンスにおいて重要です。
特に管理職は、現場の問題を最初に把握したり、部下から相談を受けたりする立場になることがあります。
その際に、「これくらいなら大丈夫」「自分の部署だけで処理しよう」と自己判断するのではなく、速やかに会社へ報告し、適切な対応につなげることが重要です。
問題が発生してから初めて対応方法を考えるのではなく、平時から「問題が起きたら誰に報告するのか」「管理職は何をするのか」を共有しておくことが、適切な初動対応につながります。
問題発生時に動ける管理職を育てるコンプライアンス研修
弁護士法人かける法律事務所では、企業の管理職を対象とした「管理職コンプライアンス実践研修」を実施しています。
コンプライアンス研修で重要なのは、違反となる行為を覚えることだけではありません。
実際に問題が起きたときに、
「まず何をすべきなのか」
「どのような事実を確認すべきなのか」
「どこまで自分で対応し、どの段階で会社へ報告・相談するのか」
を管理職が理解し、行動できることが重要です。
当事務所の研修では、実際の紛争・トラブル事例などを踏まえ、具体的なケースを通じて「どのようなリスクがあるのか」「なぜ問題が起きたのか」「どう予防・対応すべきなのか」を考えていただくことを重視しています。
特に、
- 問題発生時の管理職の初動対応に不安がある
- 管理職によって報告・対応の判断にばらつきがある
- 問題を現場だけで抱え込んだり、報告が遅れたりすることを防ぎたい
- 実際の事例を使って管理職の判断力・対応力を高めたい
- 自社の業種や課題に合わせたコンプライアンス研修を実施したい
といった企業様には、管理職への実践的なコンプライアンス教育が有効です。
コンプライアンス違反を完全になくすことだけを目指すのではなく、問題を予防し、万が一発生した場合にも早期に把握し、適切に対応できる組織をつくることが重要です。
弁護士法人かける法律事務所では、企業の業種・実情・課題に応じたコンプライアンス研修をご提案しています。
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