
目次
よくある相談
- 従業員100名に満たない当社でも、法務担当者は必要でしょうか?
- 法務担当者を置くと、具体的にどんなメリットがあるのかイメージできません。
- 企業が成長していくうえで、法務機能は本当に役に立つのでしょうか?
法務担当者とは?―業務内容と企業における役割
法務担当者とは、企業活動に伴う法律面のリスクを把握し、トラブルを未然に防ぐための仕組みづくりや、契約・取引に関する判断を担う人材です。「法律相談に対応する人」というイメージを持たれがちですが、実際には日常業務に深く関与し、経営判断や事業運営が適切に行われるよう支援します。
主な業務としてまず挙げられるのは契約書のチェックや作成支援です。曖昧な表現やリスクの高い条項がないかを確認し、必要に応じて修正提案を行います。特に近年は、下請法、ハラスメント防止、個人情報保護、労働関係などの分野で改正が相次いでおり、法改正を踏まえた対応が求められます。
また、社内規程の整備、コンプライアンス体制構築、リスク管理も重要な業務です。トラブルが発生した際の対応フローの整備や、従業員研修、内部通報制度の運用、取引スキームの適法性確認等が含まれます。
さらに法務担当者は、「守り」だけでなく「攻め」の役割も担います。新規事業や業務提携など重要な意思決定の場面で法的観点からサポートすることで、リスクを抑えながら迅速な挑戦につなげることができます。
企業によっては専任者を置かず、総務・人事・営業などが兼務していることもありますが、対応が後手に回るとトラブルが長期化し、損害が拡大することもあります。
法務担当者は「法律に詳しい人」ではなく、企業の持続的成長を支える判断と体制づくりの担い手と言えます。
法務担当者が不在の場合のリスク
法務リスクは「トラブルが表面化してからでは遅い」という前提を持つことが重要です。表面的に問題がなくても、契約や取引判断が担当部署に任され、気付かないままリスクが蓄積している企業も少なくありません。
法務担当者がいない場合、契約書の確認は営業や総務が過去のひな形で対応するケースが多く、法的視点を欠いたまま交渉が進む傾向があります。「取引先を信頼している」「うちは小規模だから大丈夫」「経験で対応できる」と考える企業もありますが、規模に関係なく契約トラブルや情報漏えい、労務問題、景表法違反などは発生しています。
特に影響が大きいのは、トラブル時の初動遅れによる損害拡大です。法的判断ができず交渉が不利になり、高額な損害賠償や和解に追い込まれるケースもあります。契約内容が曖昧なままでは、売掛金回収ができなかったり、相手の主張に反論できないこともあります。
さらに、契約締結までのスピードが低下し、機会損失につながる危険性もあります。法務担当者が関与していれば、事前にリスク確認ができ、迅速かつ適切に契約を進めることが可能です。
また、見えないリスクの放置も問題です。法改正への対応が遅れた場合、行政指導や信用低下につながることがあります。景表法違反による広告差し替えや、機密情報管理の不備による契約違反対応事例がその典型です。
法務が不在の企業では「おそらく問題ない」という判断が将来的に足かせになることも多く、挑戦が慎重になりがちです。法務は“問題発生後に対応する部署”ではなく、“リスクを見える化し、挑戦を支える仕組みを整える存在”であることを理解することが大切です。
法務担当者を配置するメリット―企業が得られる価値とは
法務担当者の役割は「トラブルを防ぐ人」だけではありません。法務が関与することで、経営や営業・管理部門の判断が明確になり、リスクを抑えつつ前向きな意思決定ができるようになります。法務は守りだけでなく、経営判断を支える“参謀”でもあると言えます。
まず、リスク削減効果です。契約内容や最新の法令に基づいて判断することで、行政指導や損害賠償などの重大なリスクを未然に防ぐことができます。例えば、下請法・個人情報保護・ハラスメント防止措置など、近年の改正に対応する体制を整えることが可能です。
次に、契約条件の最適化による利益確保です。納期や責任範囲、損害賠償の上限などの条項調整により、無駄な作業の発生や不必要な負担を抑え、利益を守ることに繋がります。
また、法務がリスクを「見える化」することで、経営判断のスピードが向上します。「ここまでは問題ない」「ここは対策が必要」という明確な線引きができるため、過度な慎重さによる機会損失を防ぐことができます。
さらに、法改正への迅速な対応や、M&A・新規事業など大きな意思決定の場面でも法務の関与は重要です。適切な契約交渉やスキーム検討により、将来の紛争や追加コストを回避できます。
法務担当者は“リスクを止める人”ではなく、安心して挑戦できる環境を整えるパートナーです。企業の成長と持続性を高める存在として、その重要性は今後さらに高まるでしょう。
法務担当者が必要とされる企業の特性・特徴
法務担当者の配置が特に有効となるのは、取引量が多い企業や、新規事業・業務提携など挑戦的な取り組みが増えている企業です。営業活動が活発であったり、協力会社や委託先と契約を結ぶ場面が多い場合、契約条件のわずかな違いが利益に直結するため、法務の関与があるかどうかで結果が大きく変わります。
また、従業員数や売上規模に関わらず、複数部門が関与する取引が多い企業や、意思決定のスピードが求められる企業では、事前にリスクを整理できる法務担当者の存在が重要です。特に近年では、ハラスメント防止義務化、下請法改正、個人情報保護、働き方改革など、企業を取り巻く規制が複雑化しているため、内部で判断するには限界が生じやすくなっています。
さらに、「トラブルが起きてから対応するのではなく、事前に対策したい」と考える企業や、社内でのルールや体制の整備を進めたい企業にも適しています。特に、企業の成長段階にある会社や、外部との連携が増えている会社ほど、法務担当者が経営の意思決定に関与することで、挑戦のスピードと安全性が高まります。
法務担当者は、企業規模ではなく、「取引の質」「成長の方向性」「意思決定のあり方」に応じて必要となる存在です。課題が顕在化してからではなく、未来に備えるための“戦略的な選択肢”として配置を検討することが大切です。
まとめ&弁護士法人かける法律事務所が提供できる支援内容
ここまで述べたとおり、法務担当者は、“トラブル対応の部署”ではなく、企業の成長と安定の両面を支える役割を担います。
そして、その機能が十分に発揮されるためには、社内だけで完結させるのではなく、外部の専門家と連携しながら整備していくことが重要です。
弁護士法人かける法律事務所では、社内法務担当者と協力しながら、企業の状況に応じて可能な範囲から支援を開始するスタイルを取っています。即座に完璧な法務体制を構築するのではなく、現状を丁寧に把握し、優先度の高い領域から段階的に整備していくことを重視しています。
特に、法務担当者や管理部門の外部相談先・伴走者として、実務面でのアドバイスを提供しながら、少しずつ内部体制のレベルを引き上げるご支援も行っています。
主なサポート内容(企業の状況に応じて対応)
サポート①法務担当者との相談・ミーティング
- 契約・取引・労務・広告表現などの日常的な相談
- トラブル対応や法改正に関するアドバイス
- 必要に応じて体制整備の検討支援
⇒ 「困ったときに相談できる相手がいる」ことで判断のスピードと安心感が高まります。
サポート②契約書テンプレートやチェックのサポート
- 取引内容に合った契約書整備
- チェック時の注意点や修正案の提示
⇒ 段階的にひな形を整理し、効率化とリスク低減につなげます。
サポート③法務体制・業務フロー検討支援(必要に応じて)
- 契約審査や稟議の流れの明確化
- 相談ルートや役割分担の整理
⇒ 一度に整備するのではなく、実務に合わせて無理なく進めます。
サポート④研修・規程整備(希望に応じて)
- ハラスメント・下請法・個人情報などの研修
- 規程や契約書の見直しサポート
⇒ 必要な範囲での整備から始め、徐々に品質向上を図ります。
サポート⑤紛争・交渉対応
- トラブル発生時の相談や初動支援
- 必要に応じた交渉・訴訟対応
⇒ 重大なトラブルに備え、対応可能な範囲で早期に相談いただくことが重要です。
企業法務サポートをご検討の方へ
弁護士法人かける法律事務所は、契約・取引法務に加え、人事労務やコンプライアンス分野にも精通していることが特徴です。
企業の実務や現場理解を踏まえ、「理想論ではなく、実務で使える企業法務」を大切にしています。机上の法的議論だけではなく、経営判断・事業推進とのバランスを取りながら、実行可能な対応策をご提案することを重視しています。
法務体制の整備についても、初めから完璧な仕組みを構築する必要はありません。現在のお困りごとや事業の特性を確認したうえで、優先度の高い部分から無理のないステップで対策を進めることが重要です。当事務所でも、企業ごとの成長段階や担当者のスキルに応じて、実務的なアドバイスや体制構築のサポートを行っています。
また、法務担当者や管理部門の外部相談先・伴走者として、必要に応じて、打合せや実務相談にも対応しています。判断に迷う場面や社内調整が難しい場合には、第三者的視点から助言することで、社内の意思決定の支援となるケースも多くあります。
当事務所自身も、企業法務分野の研究や法令改正への対応を継続し、今後さらにサービス品質を高めていくことを目指しています。企業とともに成長し、実務に根ざした法務支援を進化させ続けることが、私たちの方針です。
本コラムが、自社の法務体制やリスク管理を見直すきっかけとなれば幸いです。必要に応じて、現状把握からご一緒することも可能ですので、その際はお気軽にご相談ください。
