法律コラム

Q&A<独占禁止法・下請法>発注事業者 (企業) の観点からフリーランス新法の取引条件の明示義務について、弁護士が解説します。

2024.09.30

よくある相談例

  1. フリーランス新法って、なんですか?
  2. フリーランスと取引する際、取引条件を明示する必要はありますか?
  3. フリーランスと取引しますが、取引条件の明示に際して注意することを知りたい。

フリーランス新法とは?

 フリーランス新法とは、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」の略称です。フリーランス・事業者間取引適正化等法とも呼ばれます。

 フリーランス新法は、令和6(2024)年11月1日から施行されます。

 フリーランス新法は、業種や業界の限定はありませんし、下請法が規定する資本金要件もありません。つまり、フリーランス新法は、フリーランスとの間で業務委託取引を行うすべての企業が適用の対象です。

 フリーランス新法は、①フリーランスと発注事業者との間の取引の適正化と②フリーランスの就業環境を整備することによって、フリーランスが安心して働ける環境の整備を目的としています。

フリーランス新法における発注事業者の義務とは?

 フリーランス新法では、取引の適正化の観点とフリーランスの就業環境の整備の観点から、発注事業者の義務や禁止行為を定めています。

1. 取引の適正化

  1. 取引条件の明示義務(3条)
  2. 期日における報酬支払義務(4条)
  3. 発注事業者の禁止行為(5条)

2. 就業環境の整備

  1. 募集情報の的確表示義務(12条)
  2. 育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(13条)
  3. ハラスメント対策に係る体制整備義務(14条)
  4. 中途解除等の事前予告・理由開示義務(16条)

フリーランス新法における取引条件の明示義務とは?

 発注事業者は、フリーランスに業務委託した場合、直ちに取引条件を、書面又は電磁的方法によって明示しなければなりません。口約束や電話だけで取引条件を明示するだけでは、フリーランス新法違反となります。

 明示する取引条件は、以下のとおりです。

  1. 発注事業者及びフリーランスの名称(識別情報)
  2. 業務委託日(業務委託を合意した日)
  3. フリーランスの業務内容
  4. 納品日/作業日
  5. 納品場所/作業場所
  6. 検査が必要な場合、検査完了日
  7. 報酬額及び支払期日
  8. 現金以外で報酬を支払う場合、支払方法

 フリーランス新法における取引条件の明示義務は、企業がフリーランスに取引を発注するときだけでなく、フリーランスがフリーランスに業務を発注するときも適用されます。

取引条件の明示義務のポイント

  1. 書面又は電磁的方法かどうかは発注事業者が選択できます。
  2. 電磁的方法には、電子メール、SMS、SNSメッセージ又はチャットツール等も含まれます。
  3. フリーランス(業務委託事業者)がフリーランスに委託する場合でも取引条件の明示が必要となります。

注意点①発注事業者の名称(識別情報)とは?

 発注事業者の商号、氏名若しくは名称又は事業者別に付された番号、記号その他の符号であって、発注事業者を識別できる情報を明示する必要があります(フリーランス新法規則1条1項1号)。

 この識別情報は氏名又は登記されている名称に限られないとされており、ニックネームやビジネスネームでも問題ないとされています。

 ただ、トラブル防止の観点から発注事業者やフリーランスは、互いに取引先の氏名や登記されている名称を把握しておくことが望ましいともされています。

注意点②知的財産権の譲渡・許諾

 業務委託取引に際して、知的財産権の譲渡や許諾が必要となる場合、譲渡・許諾の範囲を明確に記載する必要があるとされています。

 また、当該知的財産権の譲渡や許諾に係る対価を報酬に加える必要があるともされています。

注意点③書面の交付を求められた場合

 取引条件を電磁的方法によって明示した場合、フリーランスから書面の交付を求められたときは、書面を交付する必要があります。ただ、フリーランス保護に支障が生じない場合、必ずしも書面を交付する必要がありません。

フリーランス保護に支障が生じない場合:

  • フリーランスの求めに応じて、電磁的方法で明示した場合
  • アプリ上で業務委託取引がすべて完結する場合
  • すでに書面を交付している場合

報酬額を具体的に記載することができない場合は、どうしたらいいですか?

 報酬の具体的な金額を明示することが原則ですが、具体的な金額を明示することが困難で、やむを得ない事情がある場合には、報酬の具体的な金額を定めることとなる算定方法を明示することも認められます。

やむを得ない事情の具体例:

  1. 原材料費等が外的な要因により変動し、これらに連動して報酬の額が変動する場合
  2. プログラム作成委託において、プログラム作成に従事した技術者の技術水準によってあらかじめ定められている時間単価及び 実際の作業時間に応じて報酬が支払われる場合
  3. 一定期間を定めた役務提供であって、当該期間における提供する役務の種類及び量に応じて報酬の額が支払われる場合(ただし、提供する役務の種類及び量当たりの単価があらかじめ定められている場合に限る 。)

弁護士に依頼できるフリーランス新法への対応内容

  1. フリーランス新法に対応した取引条件のチェック・アドバイス
  2. フリーランス新法に対応した契約書類の作成サポート
  3. フリーランス新法に対応した就業環境の整備サポート
  4. フリーランスとのトラブル対応・代理交渉
  5. 行政機関による調査対応サポート
  6. コンプライアンス研修(独占禁止法・下請法・フリーランス新法)

独占禁止法・下請法・フリーランス新法対応は、弁護士法人かける法律事務所にご相談ください。

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細井 大輔

このコラムの執筆者

代表弁護士細井 大輔Daisuke Hosoi

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