法律コラム

Q&A<インターネット誹謗中傷対応>業務妨害罪/信用毀損罪について弁護士が解説しますー企業による誹謗中傷対策ー

2024.05.27

よくある相談例

  1. インターネット上で、会社の誹謗中傷を受け、業務が妨害されています。
  2. X (旧Twitter) で、特定のアカウントから誹謗中傷を執拗に受け、会社の信用が低下しています。
  3. SNSで、業務の誹謗中傷を受けているが、適切な対応方法がわかりません。

1. 業務妨害罪とは?

 業務妨害罪とは、①虚偽の風説の流布や偽計を用いて、又は、②威力を用いて、他人の業務を妨害する犯罪です(刑法233条、234条)。妨害の手段によって犯罪の名称が異なり、上記①(虚偽の風説の流布や偽計)の場合を「偽計業務妨害罪」(刑法233条)、上記②(威力)の場合を「威力業務妨害罪」(刑法234条)といいます。

 いずれの場合も、法定刑は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。

刑法233条(信用毀損及び業務妨害)

 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

刑法234条(威力業務妨害)

 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

① 「虚偽の風説の流布」とは?

 「虚偽の風説の流布」や「偽計」を用いて他人の業務を妨害した場合には、偽計業務妨害罪が成立します(刑法233条)。

 「虚偽の風説の流布」とは、一般的に、客観的真実に反する噂や情報(虚偽の風説)を、不特定又は多数の人に伝播させること(流布)をいいます。

 「虚偽の風説」については、特に、その出所や根拠が示されている必要はありません。また、「流布」については、行為者が直接不特定又は多数に告知せずとも、特定の第三者を通じて順次不特定又は多数の人に伝播された場合も、「流布」に該当します。

具体例:

  • ある事業者の製品に対してほとんどが不良品だという虚偽の事実を広める行為
  • 生鮮食品を販売しているスーパーについて、産地を偽装しているという噂を流す行為
  • ライバルの飲食店について、日常的に害虫が発生しており不衛生だという口コミを投稿する行為

② 「偽計」とは?

 「偽計」とは、人を欺いたり、人の錯誤や不知を利用したり、計略や策略を用いる等の不正な手段を用いることをいいます。

具体例:

  • 代金を支払う意思がないのに大量の出前の注文をして架空の住所に配達させる行為
  • 虚偽の犯罪行為の通報を行い、警察官を出動させる行為
  • デパートで売られている衣類に、大量の針を混入させる行為

③ 「威力」とは?

 「威力」を用いて他人の業務を妨害した場合には、威力業務妨害罪が成立します(刑法234条)。

 「威力」とは、一般的に、「人の意思を制圧するような勢力」のことをいいます。暴行・脅迫はもちろん、暴行や脅迫に至らないものであっても、社会的地位を利用した威迫や、団体の力の誇示、物の損壊等、人の意思を制圧するような勢力一切を含みます。

 「偽計」との違いですが、一般的に、妨害行為が誇示的・可視的に行われれば「威力」であり、妨害行為が隠密的・不可視的に行われれば「偽計」であるという基準によって区別されます。

具体例:

  • 事業所の入口の前に大量の粗大ごみを放置する行為
  • 飲食店の店舗内で大量の害虫を巻き散らす行為
  • 大勢の人がいるデパートの売り場で、大声でクレームを叫び続ける行為

④ 妨害行為について

 偽計業務妨害罪でも威力業務妨害罪においても、業務が「妨害」されたことが要件となります。

 もっとも、これについては、現実に業務遂行が妨害されることまでは必要なく、業務が妨害されるおそれがある行為があれば足りるというのが一般的な見解です。

⑤ インターネット上の誹謗中傷でも業務妨害罪が成立すること

 インターネット上で企業に対する誹謗中傷が行われた場合でも、それによって、企業の信用やブランドが低下することがあります。

 典型的には、企業が提供している製品やサービスについて、虚偽の事実や過度に貶めるような内容をSNS上で投稿をする場合等です。

 このような投稿によって、企業の信用や今後の取引関係等に悪影響を及ぼすおそれがあるといえる場合には、現実に業務遂行が妨害されていなくても、業務妨害罪が成立することになります。

 例えば、最近実際にあったケースとして、飲食店のフランチャイズ店舗の従業員が、SNS上で「厨房にナメクジが大量に発生している」という投稿を行ったケースがあります。

 このケースでは、従業員の投稿について、偽計業務妨害罪として起訴されています。このケースでは、従業員の投稿が原因となって、飲食店の店舗がフランチャイズ契約を解除されており、現実に大きな業務妨害が発生したことが、起訴にまで至った大きな理由であると考えられます。

 仮に「厨房にナメクジが大量に発生している」という投稿が虚偽ということになれば、従業員の投稿は「虚偽の風説の流布」や「偽計」に当たり、偽計業務妨害罪が成立するということになるでしょう。

2. 信用毀損罪とは?

 信用毀損罪とは、虚偽の風説の流布や偽計を用いて、他人の信用を毀損する犯罪です(刑法233条)です。

 「虚偽の風説の流布」や「偽計」の意味については、業務妨害罪で説明した内容と同じです。

刑法233条(信用毀損及び業務妨害)

 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

① 「信用」とは?

 信用毀損罪は、経済的な側面における社会的評価を保護するものです。そのため、「信用」とは、個人や企業の経済的な側面における信用(支払能力や支払意思に関する信用)に加えて、販売している商品やサービスに対する社会的信頼も含むとされています。

 これらの信用や信頼を保護することで、個人や企業が経済取引を円滑に行う利益を保護することを信用毀損罪は目的としています。

具体例:

  • ある企業について倒産間近であるという情報を流す行為
  • ある企業の製品やサービスについてデマを流す行為
  • 実際に商品を購入したことがないのに、通販サイトで虚偽の口コミ(低評価の口コミ)を行う行為

② 毀損行為とは?

 信用の「毀損」ですが、業務妨害罪と同様に、現実に信用が低下したことまでは必要なく、信用を低下させるおそれがある状態が作り出されることで足りるというのが一般的な考え方です。

③ インターネット上の誹謗中傷でも信用毀損罪が成立すること

 業務妨害罪で述べたのと同様に、インターネット上の誹謗中傷の場合でも、企業の経済的な側面の信用を低下させるおそれが生じていれば、信用毀損罪が成立することになります。

 例えば、実際にあったケースとして、アマゾンでの口コミの投稿について、信用毀損罪として処罰されたケースが実際にあります。

 事案の内容としては、ある会社の役員が、アマゾンで販売されている競合他社の商品について、第三者にやらせ口コミを依頼し、商品の購入もなしに低評価レビューを行わせたというケースです。このようなケースにおいて、やらせ口コミを依頼した会社役員について、信用毀損罪として処罰されています。

 このようにインターネット上の誹謗中傷の場合についても、信用毀損罪は成立します。

3. 業務妨害罪や信用毀損罪の対応への必要性~SNS社会を踏まえて~

 企業に対する業務妨害や信用毀損が行われている場合、放置すると、業務妨害や信用毀損がさらにエスカレートしたり、また、企業の信用低下に繋がります。

 企業の信用が低下することで、取引に悪影響を及ぼしたり、人材の確保に悪影響を及ぼすこともあります。

 特に、最近のSNS社会では、SNS上で企業の誹謗中傷が行われるケースが増えています。

 また、SNSを用いて企業の情報収集をすることも増えているため、SNS上で企業の信用に影響を及ぼす投稿が行われた場合、瞬時にかつ広範囲に拡散されるため、被害が大きくなる傾向にあります。しかも、そのように一度広く毀損させられた信用を完全に回復するのは、実際上困難といえます。

 そのため、企業に対する業務妨害や信用毀損が行われている場合、被害の拡大を防止するために、迅速に対応を行うことが重要となります。

4. 業務妨害罪や信用毀損罪に対する対応策

 企業に対する業務妨害や信用毀損が発生している場合、企業が行う対応策としては、①民事手続(損害賠償請求)や②刑事告訴があります。

 特に、今後も加害行為の継続が想定される等悪質な場合は、警察に刑事告訴を行って、加害者の処罰を求めることが、被害拡大の防止のために効果的なケースもあります。

 もっとも、刑事告訴を行う上で、投稿者や発信者の特定が求められることもあります。その場合、発信者情報開示請求手続を速やかに行うことも検討することが必要で、刑事手続と民事手続を組み合わせることも必要です。

弁護士による業務妨害罪/信用毀損罪への対応方法

1.裁判手続を含めた迅速な対応

 業務妨害や信用毀損が行われている場合、被害の拡大を防止するためには、迅速に対応方法を検討し、裁判手続を含めた必要な手続を進めていく必要があります。

 もっとも、企業が業務妨害や信用毀損への対応に慣れていない場合、本質的な業務と並行したこれらの対応を迅速に行うことは、大きな負担となります。

 この点、弁護士であれば、業務妨害や信用毀損に当たるかの法的判断や、裁判手続を含めた諸手続を、迅速に、かつ適切に進めていくことができます。

 特に、SNS上の誹謗中傷の場合では、投稿者を特定する手続(発信者情報開示請求)も必要な場合があり、手続の負担が大きくなります。法的知識や裁判手続に詳しい弁護士に依頼することで、これらの必要な手続を適切かつ迅速に進めることができ、企業にとっての負担も軽減することができます。

2.刑事告訴の対応

 企業に対する悪質な業務妨害や信用毀損については、加害者に対する処罰を求めて、刑事告訴を行うことが考えられます。

 もっとも、刑事告訴を受理してもらうためには、告訴状を作成・提出した上で、実際に会社の代表者等が警察署へ赴き、加害者の行為が法的に業務妨害罪や信用毀損罪に当たることや、被害の重大性について、捜査機関に説明する必要があります。

 また、SNS上での投稿について刑事告訴を行う場合には、投稿者の特定の問題や犯罪の該当性等が特に問題になりやすく、刑事告訴の受理のハードルが上がる傾向にあります。

 また、インターネット上の誹謗中傷については、投稿者の特定の難しさや、犯罪への該当性等が問題になりやすく、捜査機関として、刑事告訴の受理に消極的なこともあります。場合によっては、先に発信者情報開示請求を行って投稿者を特定した上で、警察署へ相談することを求められるケースもあります。

 このように、刑事告訴を受理してもらうためには、いくつかのハードルがあり、企業が本来の業務とは別に手続を進めるには、かなりの時間と労力が必要となります。

 弁護士であれば、刑事告訴手続について熟知しているため、適切な内容の告訴状を作成することができ、代理人として警察との面談も行えるため、迅速に、告訴受理に向けた手続を行うことができます。

弁護士法人かける法律事務所が対応できること

 弁護士法人かける法律事務所には、SNSでの企業に対する誹謗中傷の問題に対応できる弁護士が在籍しています。SNSでの投稿による誹謗中傷についてお困りの場合、まずは、ご相談ください。お問い合わせは、こちら

弁護士に依頼できること

  1. 企業に対する誹謗中傷が業務妨害や信用毀損に当たるかどうか法的対応が可能かどうか知りたい。
  2. SNSで企業に対する誹謗中傷が発生しており、刑事告訴も含めて、今後の対応方法について相談したい。
  3. SNSでの誹謗中傷についての対策を本格的に検討しており、法的な観点を含めて、対応方法や対策について継続的に相談したい。

 弁護士法人かける法律事務所では、企業に対する誹謗中傷問題について、常時ご依頼を承っております。

 企業法務や誹謗中傷問題に精通した弁護士が、迅速かつ的確にトラブルの解決を実現します。お悩みの経営者の方は、まずは法律相談にお越しください。貴社のお悩みをお聞きし、必要なサービスをご提供いたします。

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鄭 寿紀

このコラムの執筆者

弁護士鄭 チョン寿紀スギSugi Jeong

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