法律コラム

Q&A<コンプライアンス・不祥事対応>コンプライアンスの観点から反社会的勢力対応を弁護士が解説します。

2024.03.29

相談例:

  1. 反社会的勢力の対応方法を教えてほしい。
  2. 取引先が反社会的勢力であることが発覚した。
  3. 当社のミスで、過剰なクレームを要求されている。

反社会的勢力とは?

 反社会的勢力とは、法律上では必ずしも明確な定義があるわけではありませんが、一般的に、暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人とされています。反社会的勢力かどうかは、①属性要件や②行為要件で総合的に判断されます。

①属性要件:

暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等

②行為要件:

暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求

反社会的勢力は、会社や個人に対して、暴力的な方法で不当な要求を行うことがあって、その対応を間違うと、会社、従業員や株主が重大な不利益を被ることがあり、コンプライアンスの観点から問題となります。

反社会的勢力による活動例:

  • 覚せい剤の取引、恐喝、賭博、ノミ行為、売春、みかじめ料請求
  • 官公庁に対する不当要求、公共工事への参入や嫌がらせ
  • 企業や従業員に対する不当要求や企業の乗っ取り
  • 寄付金・賛助金の要求、機関誌購読の要求
  • 特殊詐欺、ネット犯罪

反社会的勢力の排除とコンプライアンス

 企業(会社)は、法令や社内ルールを守ること(法令遵守)に加えて、会社の理念や価値観を大切にすること、また、社会の要請に応えるという意味で、コンプライアンスが求められています。

 コンプライアンスに違反する場合、様々な責任が発生して、会社に重大な損害が発生したり、お客様や取引先、社会に対する信頼が低下します。また、コンプライアンス違反によって、事業活動の継続に重大な支障を来し、最悪の場合、事業活動を停止せざるを得なくなります。

責任(リスク)の種類:

  • 民事責任
  • 刑事責任
  • 行政責任
  • 社会的責任

 平成19(2007)年に公表された「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(いわゆる政府指針)では、反社会的勢力対応は、コンプライアンスそのものであると説明しています。

政府指針の一部抜粋:

「反社会的勢力を社会から排除していくことは、暴力団の資金源に打撃を与え、治安対策上、極めて重要な課題であるが、企業にとっても、社会的責任の観点から必要かつ重要なことである。特に、近時、コンプライアンス重視の流れにおいて、反社会的勢力に対して屈することなく法律に則して対応することや、反社会的勢力に対して資金提供を行わないことは、コンプライアンスそのものであるとも言える。」

 そのため、会社は、法令等の遵守体制・リスク管理体制(いわゆる内部統制システム)の整備の一環として、コンプライアンスの視点から、反社会的勢力に対応するための仕組みを整備する必要があります。

反社会的勢力の対応が必要となる場面

 反社会的勢力の対応が必要となる場面は、主に以下のとおりです。

  1. 取引開始前に反社会的勢力であることが発覚した場合
  2. 取引開始時に確認・誓約が必要となる場面
  3. 取引開始後に反社会的勢力であることが発覚した場合
  4. 不当な要求やクレームが発生した場合

反社会的勢力の排除に向けた対応方法ー基本方針

 政府指針では、反社会的勢力対応に関する基本方針について、以下のとおり、説明されています。

  1. 組織としての対応
  2. 外部専門機関との連携
  3. 取引を含めた一切の関係遮断
  4. 有事における民事と刑事の法的対応
  5. 裏取引や資金提供の禁止

 上記基本方針のうち、③取引を含めた一切の関係遮断のためには、お客様や取引先との間で取引や契約を行う場合、反社会的勢力の排除条項を規定することが重要となります。

 反社会的勢力の排除条項によって、反社会的勢力との取引を抑制できるとともに、お客様や取引先が反社会的勢力であることが判明した場合、契約や取引の解消が可能となります。

反社会的勢力の排除条項の具体例:

1.甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、次の各号の事項を確約する。

  • 自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員(以下総称して「反社会的勢力」という。)ではないこと
  • 自らの役員(取締役、執行役、執行役員、監査役又はこれらに準ずる者をいう。)が反社会的勢力ではないこと
  • 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものでないこと
  • 自ら又は第三者を利用して、この契約に関して次の行為をしないこと
    ア 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為イ 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し、又は信用を毀損する行為

2. 甲又は乙の一方について、次のいずれかに該当した場合には、その相手方は、何らの催告を要せずして、この契約を解除することができる。

  • 前項(1)又は(2)の確約に反する表明をしたことが判明した場合
  • 前項(3)の確約に反し契約をしたことが判明した場合
  • 前項(4)の確約に反した行為をした場合

3. 前項の規定によりこの契約が解除された場合には、解除された当事者は、その相手方に対し、相手方の被った損害を賠償するものとする。

4. 第2項の規定によりこの契約が解除された場合には、解除された当事者は、解除により生じる損害について、その相手方に対し一切の請求を行わない。

反社会的勢力の対応に向けて、弁護士(法律事務所)ができること

 反社会的勢力の対応は、会社が組織として対応するだけでなく、外部専門機関との連携も重要です。反社会的勢力の対応について、弁護士(法律事務所)に相談し、依頼することもできます。

  1. 反社会的勢力のチェック
  2. 反社会的勢力対応へのアドバイス
  3. 反社会的勢力との窓口対応・代理交渉
  4. 民事訴訟手続(民事裁判)
  5. 刑事告訴手続
  6. 社内調査及び再発防止策の検討
  7. コンプライアンス研修の開催

反社会的勢力の対応は、かける法律事務所にご相談ください。

 弁護士法人かける法律事務所では、顧問契約(企業法務)について、常時ご依頼を承っております。企業法務に精通した弁護士が、迅速かつ的確にトラブルの解決を実現します。お悩みの経営者の方は、まずは法律相談にお越しください。貴社のお悩みをお聞きし、必要なサービスをご提供いたします。

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 紛争・訴訟対応(リスク案件対応)だけではなく、紛争や訴訟を未然に予防するためのコンプライアンス研修も引き受けていますので、是非一度お問い合わせください。

細井 大輔

このコラムの執筆者

代表弁護士細井 大輔Daisuke Hosoi

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