法律コラム

Q&A<独占禁止法・下請法>建設業における下請法上の問題点を弁護士が解説します。

2024.03.25

相談例:

  1. 建設業でも下請法は適用されますか?
  2. 建設業ですが、下請法違反の調査を受けています。
  3. 建設業における下請法の注意点が知りたい。

下請法とは?

 下請法とは、「下請代金支払遅延等防止法」の略称で、下請取引の公正化や下請事業者の利益保護を目的としており、中小企業政策の重要な柱となっている法律です。

 下請法では、親事業者による下請事業者に対する優越的地位の濫用行為を取り締まるため、①親事業者の義務や②親事業者の禁止事項を定めています。

下請法の対象取引

 下請法は、適用対象となる条件について、①取引当事者の資本金の区分と②取引内容(製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託)の2つの側面から定め、それらの条件を満たす取引に下請法が適用されます。

製造委託の具体例:

  • 自動車メーカーが、販売する自動車の部品の製造を部品メーカーに委託すること
  • 精密機器メーカーが、製造を請け負う精密機器の部品の製造を部品メーカーに委託すること

修理委託の具体例:

  • 自動車ディーラーが、ユーザーから請け負う自動車の修理作業を修理業者に委託すること
  • 自社工場の設備等を自社で修理している工作機器メーカーが、その設備の修理作業の一部を修理業者に委託すること

情報成果物作成委託の具体例:

  • 不動産会社が、販売用住宅の建設に当たり、当該住宅の建設設計図の作成を設計会社に委託すること
  • 工作機械メーカーが、ユーザーから製造を請け負う工作機械に内蔵するプログラムの開発をソフトウェア開発業者に委託すること

役務提供委託の具体例:

  • ビルメンテナンス業者が、請け負うメンテナンスの一部たるビルの清掃を清掃業者に委託すること
  • ビル管理会社が、ビルオーナーから請け負うビルメンテナンス業務をビルメンテナンス業者に委託すること

建設業における下請法の適用ー建設業法と下請法の交錯ー

 建設業者(元請)が他の建設業者に対して、建設工事を再委託する場合、下請法では、下請法が適用されないことが明記されています(下請法2条4項)。つまり、建設工事の再委託について、建設業法の対象として、建設業者を保護することを予定しているため、下請法は適用されません。

下請法2条4項

 この法律で「役務提供委託」とは、事業者が業として行う提供の目的たる役務の提供の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること(建設業(建設業法(昭和二十四年法律第百号)第二条第二項に規定する建設業をいう。以下この項において同じ。)を営む者が業として請け負う建設工事(同条第一項に規定する建設工事をいう。)の全部又は一部を他の建設業を営む者に請け負わせることを除く。)をいう。

 そのため、建設業では、下請法が適用されないとか、下請法は無関係であると理解をされる方もいます。

 もっとも、建設業の取引でも、下請法が適用される取引があるため、注意する必要があります。つまり、下請法の適用の有無は、「業種」ではなく、「取引内容」(委託内容)で判断することになります。

 具体的には、以下の取引については、下請法が適用され、建設業でも下請法が問題となる場合があります。これは、建設業法が適用されない取引について、下請法によって下請事業者を保護する必要があり、下請法が適用される可能性があります。

建設業における下請法が適用される取引:

  1. 設計図等の作成を委託する場合(設計業者との取引)
  2. 建設工事に使用する建設資材を製造しており、その製造を委託する場合(建設資材メーカーとの取引)
  3. 販売している建設資材の製造を委託する場合(建設資材メーカーとの取引)

*建設業と下請法に関する公正取引委員会の見解は、こちら

建設業における下請法の注意点

 建設業でも下請法が適用される可能性があります。そのため、以下について、注意する必要があります。

①適用法令の確認(建設業法と下請法)

 建設業における取引について、建設業法が適用されるのか、それとも、下請法が適用されるのかについて確認する必要があります。

②下請法による行為規制

 建設業法の規制がなくても、下請法による規制がある場合があります。建設業法と下請法では共通する部分もありますが、建設業法の規制行為となっていなくても、下請法の規制行為となっている場合があります。そのため、安易に建設業法の取扱いがそのまま適用されると考えると、下請法違反を指摘され、予期しない不利益(リスク)が発生する場合があります。

 建設業法の規制行為にはなっていないが、下請法の規制行為になっている行為として、特に、以下のものについて、注意する必要があります。

  • 下請代金の減額(下請法4条1項3号)
  • 返品の禁止(下請法4条1項4号)
  • 不当な給付内容の変更や不当なやり直しの禁止(下請法4条2項4号)
  • 不当な経済上の利益の提供要請の禁止(下請法4条2項3号)

 例えば、建設業法では、下請法が規定する「不当な給付内容の変更や不当なやり直しの禁止」に対応する規定がないため、設計図等の作成委託におけるやり直し等について、下請法違反を指摘されたケースが相当数あります。

③優越的地位の濫用(独占禁止法)の適用

 建設業法でも、下請法でも、グレーゾーンとなっている取引(行為)について、優越的地位の濫用(独占禁止法)として規制されることもあります。建設業における取引当事者間の地位の格差によっては、優越的地位の濫用(独占禁止法)と判断されないようにも注意しておく必要があります。

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具体的な相談例:

  1. 下請法の対象となる取引かどうか判断できない。
  2. 親事業者から下請法に違反する条件を提示されているが対応方法がわからない。
  3. 下請法に違反しないための仕組みをつくりたい。
  4. 公正取引委員会から下請法違反を指摘された。
  5. コンプライアンス研修(下請法)を開催したい。

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