法律コラム

Q&A<インターネット誹謗中傷対応>プロバイダ責任制限法とは?発信者情報開示請求を弁護士が解説します。

2023.12.13

よくある相談例:

  1. X(旧Twitter)で知らないアカウントから誹謗中傷をされた。
  2. インターネットの掲示板で、自分の知られたくない個人情報を公開された。
  3. Instagramで、自分が制作したイラストを他人に無断で利用されている。

1. プロバイダ責任制限法とは?

 プロパイダ責任制限法とは、2001年に成立した「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」の略称です。

 プロパイダ責任制限法は、主に、①プロバイダの損害賠償責任の制限、②発信者情報開示請求の手続、③発信者情報開示命令事件に関する裁判手続について定めた法律です。

 プロパイダ責任制限法は、2022年10月に発信者情報開示請求の手続について新たな裁判手続が創設される等大きな改正が行われ、社会的にも注目を集めました。

 なお、プロパイダ責任制限法は、発信者情報開示請求の手続について定めていますが、プロパイダに対して情報の削除を求める権利を定めたものではありません。

2. プロバイダの損害賠償責任の制限~プロバイダ責任制限法~

 プロパイダ損害賠償責任の制限とは、プロパイダ責任制限法が定める一定の要件を満たした場合、プロパイダに損害賠償責任が発生しないというものです。つまり、プロバイダの損害賠償責任の制限を定めています。

 具体的には、①権利侵害情報の投稿によって発生した損害(名誉毀損、著作権侵害等)について、プロパイダの損害賠償責任の制限を定めるとともに、②プロパイダが権利侵害と判断した投稿の削除措置(送信防止措置)を行った場合について、プロパイダの発信者に対する損害賠償責任の制限について定めています。

3. 発信者情報開示請求~プロパイダ責任制限法~

 発信者情報開示請求とは、インターネット上で権利侵害情報が投稿された場合に、その投稿に関与したプロパイダ(ウェブサイトの管理者や通信事業者)に対して、発信者を特定するための情報の開示を求める手続です。プロパイダ責任制限法では、発信者情報開示請求について、具体的に定められています。

 以下、X(旧Twitter)で名誉毀損の投稿が行われた場合を例に、具体的な手続の流れを説明します。

① X社に対して発信者情報開示請求を行う

 まず始めに、Xの運営会社(X社)に対して、発信者情報開示請求を行います。この段階では、名誉毀損の投稿を行ったアカウント(以下「対象アカウント」といいます。)がログインした際のIPアドレスや、対象アカウントの登録情報(電話番号・メールアドレス)等を開示請求します。

 X社への発信者情報開示請求については、基本的に、裁判手続を利用することになります。

② 通信事業者に対して発信者情報開示請求を行う

 XからIPアドレスの開示を受けた場合、発信者が投稿に利用した通信回線の提供元(通信事業者)が判明します。そのため、判明した通信事業者に対して、発信者情報開示請求を行います。この段階では、回線契約者の情報(氏名、住所等)の開示請求をします。開示請求先の通信事業者によっては、裁判手続を利用することもあります。

※X社への開示請求によって、対象アカウントの電話番号が判明した場合は、弁護士会を通じた照会手続によって、電話会社から回線契約者の情報を開示してもらえることがあります。発信者を特定するための有力な手段となりますが、この照会手続を利用するには、弁護士に手続を依頼する必要があります。

③ 発信者情報開示請求によっても発信者が特定できない場合

 ここまでの手続で発信者の特定に至るケースもあれば、さらなる調査が必要な場合もあります。

 例えば、発信者が会社やネットカフェから投稿した場合は、開示される回線契約者が会社やネットカフェの運営会社となり、発信者個人の情報は開示されません。

 その場合は、回線契約者である会社等に対して調査の協力依頼を行う等、さらなる調査が必要となります。

4. 発信者情報開示請求の注意点

① 法的な権利侵害が必要であること

 発信者情報開示請求を行うためには、前提として、ある投稿が法的に権利侵害といえることが必要です。誹謗中傷でいえば、それが、「名誉毀損」に該当するかが重要なポイントになります。

 「名誉毀損」に当たるかの判断は難しい場合もありますが、大まかにいえば、社会的評価を低下させる具体的な事実(例:「あの会社は不正な経理をしている」)が摘示されている場合は、「名誉毀損」と判断されます。

 その一方で、投稿者の主観の範疇にとどまる場合(例:「あの会社では働きたくない」)は、「名誉毀損」には当たらないという線引きになります。

 また、名誉毀損以外にも、プライバシー、肖像権、著作権といった権利の侵害の有無を判断する必要があります。

② 迅速に手続を進める必要があること

 発信者情報開示請求では、投稿が行われたウェブサイトの管理者に発信者情報開示請求を行った後、さらに、通信事業者に対して発信者情報開示請求を行うことになります。このように、2段階の開示請求手続を踏む必要があるため、その分、時間も要することになります。

 もっとも、通信事業者によっては、通信記録(ログ)を長期間保存していない事業者もあります。そのため、通信事業者に対して発信者情報開示請求を行った時点で、通信記録自体が消去されている場合があります。そうなると、発信者の特定に至らない可能性が高くなります。

 したがって、発信者情報開示請求の成功可能性を高めるには、問題となる投稿が行われてから迅速に手続に着手する必要があります。

5. 発信者情報開示請求を弁護士に依頼するメリット

 発信者情報開示請求は、問題となっている投稿について権利侵害の判断が必要です。また、プロパイダによっては、開示請求のために裁判手続をしなければならず、手続に熟知している必要があります。さらに、発信者特定の成功可能性を高めるには、問題となる投稿が行われてから迅速に手続に着手する必要もあります。

 発信者情報開示請求を弁護士に依頼することで、裁判手続を含めて、専門性の高い手続を迅速にかつ確実な方法で進めることができます。

 その結果、発信者を特定できる可能性が高まり、これが弁護士に依頼するメリットとなります。

6. 弁護士法人かける法律事務所のサービスのご案内

 弁護士法人かける法律事務所では、インターネット上の誹謗中傷における発信者情報開示請求を始めとしたお客様のニーズに合わせたサービスを提供しています。

 「投稿が違法なのか」、「どのような手続で発信者を特定していくのか」、「どれくらいの時間と費用がかかるのか」等という不安や疑問に対して、法的な観点からアドバイスいたします。

 また、インターネット上の誹謗中傷問題について、継続的に、かつ、リーズナブルに相談できる「顧問契約サービス」もあります。

 当事務所では、「安心を提供し、お客様の満足度を向上させる」という行動指針(コアバリュー)に従い、各サービスを提供していますので、是非、お問合せください。

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鄭 寿紀

このコラムの執筆者

弁護士鄭 チョン寿紀スギSugi Jeong

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