法律コラム

Q&A<契約書対応>契約書で失敗しないために~契約書のチェックポイントを弁護士が解説します~

2023.09.19

新規で取引を行うために、取引先から業務委託契約書が送付されました。契約書のチェックポイントを教えてください。

①契約の類型、②契約の当事者、③損害賠償の範囲、④契約期間、⑤契約の終了事由、⑥権利義務の内容をチェックする必要があります。

契約書の具体例

 契約書の具体例は、以下のとおりです。契約書には、様々な類型があります。

  1. 売買契約書
  2. 賃貸借契約書
  3. 業務委託契約書
  4. 秘密保持契約書
  5. 建設請負契約
  6. 運送契約書

契約書のチェックポイント

  1. 契約の類型
  2. 契約の当事者
  3. 損害賠償の範囲
  4. 契約期間
  5. 契約の終了事由
  6. 権利義務の内容

① 契約の類型

 契約書をチェックするうえで、まず大切なことは、取引の性質と契約の類型(売買、請負、委任)が一致しているかどうかを確認することです。

 契約類型を考えるうえでは、民法の考え方を知っておく必要があります。契約書のチェックが必要となるときに、取引の性質と契約類型が一致していないことがあります。例えば、取引の性質は仕事の完成を目的とする請負契約ですが、契約書の内容は売買契約書となっているというようなことがあります。

 実務担当者としては、取引の性質を正しく理解し、取引の性質を反映した契約書を準備する必要があります。

民法と契約類型(典型・非典型)

  • 民法は13種類の契約ルールを定め、この13種類の契約を典型契約(有名契約)といいます。
  • 典型契約以外の契約を非典型契約(無名契約)といいます。
  • 典型契約は、特別な合意がない限り、民法のルールが適用されます。

典型契約の具体例:

  • 贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇用、請負、委任、寄託、組合、終身定期金、和解

非典型契約の具体例:

  • 秘密保持、ライセンス、フランチャイズ、システム開発、業務提携

② 契約の当事者

 契約の法的拘束力は、原則として契約当事者間にしか及ばず、第三者に効力を生じません。そのため、契約書を作成するとき、契約相手を適切に選択する必要があります。契約は、2当事者間で締結することが多いですが、2名以上でも、問題ありません。

 取引の性質・実態を考慮して、契約相手を選ぶ必要がありますし、グループ会社を契約相手とする取引では、契約によって発生する権利義務を担保するために、契約相手の選択は慎重に判断する必要があります。

③ 損害賠償の範囲

 契約違反(債務不履行)が生じたとき、損害賠償責任を負いますが、損害賠償責任の範囲は、民法では、契約違反(債務不履行)と相当因果関係のある損害になります。

 ただ、相当因果関係という考え方は、抽象的であり、事後的に裁判所の判断に委ねられてしまうため、損害賠償の範囲が過大になってしまうリスクがあります。

 そのため、損害賠償の範囲を合理的に限定するために、損害賠償の範囲を限定する条項を規定することも検討すべきです。

損害賠償の範囲の限定方法

  • 故意又は重過失がある場合に限定する。
  • 現実に発生した直接かつ通常の損害に限定する(間接損害、逸失利益、特別損害、弁護士費用を含まない)。
  • 損害賠償の上限を設定する(例:取引金額を上限)。

④ 契約期間

 契約を締結するうえでは、契約期間を確認しておく必要があります。契約期間が短かったり、自動更新条項がない場合、ある日突然、契約が終了(打ち切り)となってしまうリスクもあります。

  • 契約期間の確認
  • 中途解約(期限前解約)の有無
  • 自動更新の有無

⑤ 契約の終了事由

 長期間・継続的な取引関係を前提とする場合、多大な投資(労力・費用)を行っているため、安易な解除(契約終了)を回避する必要があります。安易な解除(契約終了)を可能とする条項がある場合、投下資本を回収できないこともあり、重大なリスクが潜んでいることになります。

 具体的には、解除事由(解除原因)は合理的な内容といえるか?また、解除条件(無催告解除、催告解除)が厳しくないか?を検討することになります。

一般的な解除条項の具体例:

  1. 支払停止若しくは支払不能となり、又は破産手続開始、民事再生手続開始、会社 更生手続開始、特別清算開始若しくはこれらに類する手続の開始の申立てがあった場合
  2. 自ら振出し若しくは引き受けた手形又は小切手が1通でも不渡りの処分を受けた場合
  3. 差押、仮差押、仮処分、強制執行又は競売の申立てがあった場合
  4. 租税公課の滞納処分を受けた場合
  5. 金融機関から取引停止の処分を受けたとき
  6. 財産状態が悪化し又は悪化するおそれがあると認められる相当の事由があるとき
  7. 本契約に定める条項につき違反があったとき
  8. 刑法上の犯罪行為、その他法令・公序良俗に反する行為が認められたとき
  9. その他、本契約を継続し難い重大な事由が生じたとき

⑥ 権利義務の内容

 契約書を締結すると、契約当事者間において、権利義務を発生させることになるため、契約書をチェックするうえでは、不当に過大な責任を負うことがないかチェックする必要があります。主にチェックすべき条項は、以下のとおりです。

  • 契約不適合責任(瑕疵担保責任)の範囲及び期間
  • 競業避止義務の(範囲・期間)の有無及び内容
  • 違約金の有無及び内容
  • 再委託の禁止の有無及び内容

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  2. 取引先から契約書を提示されたが、リスクがないか、問題がないかどうか知りたい。
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  4. 覚書を作成したい。
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