法律コラム

Q&A<知的財産権・著作権トラブル対応>著作権侵害について訴えられた場合の対処法と損害賠償額について弁護士が解説

2023.04.28

1. インターネット上に画像を無断転載してしまった場合の著作権侵害

 他人が作成した画像には著作権が生じています。そのため、他人の著作物である画像をインターネット上に無断転載する行為は著作権侵害にあたります。

 著作権侵害が発覚すると、著作権者から画像の削除のみならず、損害賠償請求がされることになります。また、故意で著作権を侵害すると、刑事責任まで発展してしまうおそれもあります。

 著作権侵害を発見した著作権者は、まずは侵害者に対して削除を求めるとともに、損害賠償を求める警告書(通知書)を送ります。警告を受けたにもかかわらず、それを放置すると、多額の損害賠償が請求されたり、刑事告訴されたりすることがあります。

 注意が必要なのは、警告を受け、インターネット上から無断転載した画像を削除したからといって、著作権侵害がなかったことになるわけではありません。

 特に、警告が弁護士による場合には、既に過去の侵害状況についての画像保存がされており、証拠は抑えられているでしょう。著作権侵害については、現在、進行中のものだけでなく、過去の侵害に対しても損害賠償請求はできます。

 このコラムでは、著作権侵害における損害賠償額について説明します。

弁護士に依頼できる内容:

  • 著作権を侵害しているかどうか知りたい。
  • 損害賠償の減額交渉できるかどうか知りたい。
  • 解決金を支払いたいが、しっかりと和解契約書(示談書)を作成したい。
  • 著作権トラブルについて民事訴訟が提起され、訴状が届いた。
  • 話し合いがまとまらず、民事訴訟に発展するかもしれない。

2. 著作権侵害の損害賠償額(著作権法114条)

 著作権侵害による損害賠償を請求するためには、著作権者は、損害を証明する必要があり、この損害の証明には損害額の証明まで要するとされています。

 もっとも、著作権は、その保護の対象が無体の情報であるため、侵害行為によって積極的に財産が減少したとか(積極財産の減少)、侵害行為がなければ、利益が得られた(逸失利益)とか立証することは、通常困難を伴います。

 そのため、著作権法では、損害額の推定等に関する規定を設けています(著作権法114条)。

(1)譲渡等数量による損害額の算定(著作権法114条1項)

 侵害品の譲渡数量×著作権者の真正品の単位数量当たりの利益額(著作権者等の当該物に係る販売その他の行為を行う能力に応じた額を超えない限度)

*譲渡等数量の全部又は一部に相当する数量を著作権者等が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。

(2)侵害者利益額による推定(著作権法114条2項)

 侵害品の譲渡数量×侵害品の単位数量当たりの利益額

(3)利用料相当額の請求(著作権法114条3項)

 著作権等の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額(利用料相当額/ライセンス料相当額)

3. ネット上の無断転載で損害賠償請求が認められたケース

(1)「漫画村」インターネット広告事件ー知財高判令和4年6月29日

事案の概要:

 海賊版の漫画閲覧サイト「漫画村-無料コミック漫画-」に掲載する広告主を募り、同サイトの管理者に対し広告掲載料として運営資金を提供する行為について、著作権侵害の幇助行為を理由として、不法行為(民法719条1項・2項、709条)に基づき、損害賠償金1100万円及びこれに対する上記アップロードがされた最後の日である平成29年11月18日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。

判旨:

 「著作権法114条1項に基づく損害に係る当事者双方の主張等を総合的に考慮すると、少なく見積もったとしても、平均して、漫画1冊当たりの「受信複製物」の数量は、本件ウェブサイトの訪問者数の5割を下回らないものと認める(換言すると、「受信複製物」の数量をPVの約5%、二度の訪問当たり1冊にとどめることとする。)のが相当である。」とし、「平成29年4月から平成30年4月17日(本件ウェブサイトの閉鎖日)までの期間において、本件ウェブサイトの訪問者は、少なくとも月間で延べ1億人」であり、「本件ウェブサイトで閲覧し得た漫画の数は、5万冊~7万冊程度であったと認められるから、その中間値である6万冊を採用して、本件ウェブサイトに掲載されていた漫画1巻当たり、平均して、月間1666人(1億÷6万。小数点以下切捨て。以下同じ。)の訪問者を得ていたとみるのが相当である。」とした上で、「本件ウェブサイトに掲載されていた原告漫画の巻数×1巻当たり1か月当たりの受信複製物の数量1666冊×原告漫画1冊当たりの被控訴人の利益46.2円×月数」という算定方式を示し、著作権法114条1項に基づく損害金のうち1000万円及び弁護士費用100万円の合計である1100万円の支払を求める被控訴人の請求をすべて認容した。

ポイント:

 海賊版の漫画閲覧サイトに掲載する広告主を募り、同サイトの管理者に対して広告掲載料として運営資金を提供する行為について、著作権侵害の幇助にあたるとし、著作権法114条1項に基づき、海賊版の漫画閲覧サイトの訪問者数のうち5割を「受信複製物」と認定し、これに被控訴人の利益の額を乗じた額を損害金と認定した。

(2)「令和の虎」動画キャプチャ投稿事件ー東京地判令和4年11月24日

事案の概要:

 学習塾等の経営、インターネットによる情報サービス業等を業とする株式会社であり、動画投稿サイト「YouTube」に「令和の虎 CHANNEL」と題するチャンネル(以下「原告チャンネル」という。)を開設して動画を配信している原告が、ブログサービス「livedoor Blog」に「チラシの裏」と題するブログを開設した被告に対し、同ブログ上に本件各動画をキャプチャした静止画が投稿され、原告の著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害された旨を主張して、不法行為(民法709条)に基づき、損害賠償金 984 万 9845 円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。

判旨:

 「原告が本件各動画の著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額(法 114 条 3 項)の算定に当たっては、映像の使用料に係る各規定を主に参照しつつ、各規定を定める主体の業務や対象となる映像等の性質及び内容等並びに本件各動画ないし原告チャンネルの性質及び内容等をも考慮するのが相当である。加えて、著作権侵害をした者に対して事後的に定められるべき、使用に対し受けるべき額は、通常の使用料に比べて自ずと高額になるであろうことを踏まえると、原告が本件各動画の著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額(法 114 条 3項)は、合計 200万円とするのが相当である。」とした上で、発信者情報開示手続に要した費用20万円、弁護士費用22万円を含め、被告に対し、合計242万円及び遅延損害金の支払いを認め、原告の請求を一部認容した。

ポイント:

 著作権法114条3項に基づく損害額(著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額)について、通常の使用料に比べて高額になることを踏まえて、本件各動画の通常の使用料より高額の損害額を認定した。

(3)フライパン画像掲載事件ー東京地判令和4年11月28日

事案の概要:

 家庭用雑貨及び厨房用品等の売買及び輸出入業等を目的とする株式会社である原告が、物品の販売及び輸出入等を目的とする株式会社である被告に対し、被告がインターネット上の「Yahoo!JAPANショッピング」というウェブサイトに原告が著作権を有するフライパン画像を掲載したことが、原告の著作権(複製権及び送信可能化権)を侵害すると主張して、不法行為に基づき、損害賠償金46万6662円及びこれに対する不法行為後の日である令和3年4月18日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

判旨:

 「①本件各画像は、次のとおり、本件画像①ないし本件画像⑤が、本件各商品の特徴を写真や文字により説明し、本件画像⑥が上記特徴を要約し、本件画像⑦が付属するスポンジの特徴等を説明し、本件画像⑧が販売する商品に応じて当該商品と付属するスポンジを写すというものであり、販売する商品に応じて本件画像⑧の内容を選択しつつ、本件画像①ないし本件画像⑧が一体として使用されるよう作成されていたこと、②現に、被告サイトにおいても、本件各商品を販売するに当たり、販売する商品に応じて本件画像⑧の内容を選択しつつ、本件画像①ないし本件画像⑧が併せて一体として使用されていたこと、③本件各画像は、本件各商品を販売するに当たり、本件各商品を宣伝するために作成されたものであり、第三者に使用を許諾することが想定されていたものではないこと、④被告は、令和3年3月3日頃から同年5月19日頃までの間に、本件各画像を被告サイト一店舗に限り掲載したこと、以上の事実が認められる。」とした上で、「上記認定に係る本件各画像の内容や性質、被告に上よる本件各画像の使用の目的、態様及び期間その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると、本件各画像に係る著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額としては、合計5万円と認めるのが相当である。」とし、本件における著作権法114条3項に基づく損害額として、5万円及び遅延損害金の支払いを認め、原告の請求を一部認容した。

ポイント:

 本件各画像の内容や性質、被告による本件各画像の使用の目的、態様及び期間その他本件に顕れた一切の事情を考慮し、著作権法114条3項に基づく損害額(「著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」)として、5万円を認定した。

(4)イラスト掲載事件ー東京地判平成30年9月13日

事案の概要 :

 イラストレーターとして活動している原告が、ウェブサイトの運営に関与する被告に対し、原告が著作権を有するイラスト3点を被告がその運営するウェブサ イトに掲載した行為は同各イラストについての原告の送信可能化権(著作権法23条1項) を侵害するものであると主張して、送信可能化権侵害の不法行為に基づき、著作権法114 条3項により99万円の損害賠償金及び遅延損害金の支払を求めた事案である。

判旨:

 本判決は、「被告は,原告が著作権を有する本件各イラストの本件サイトへの 掲載によって本件各イラストに係る原告の送信可能化権(著作権法23条1項)を侵害し, また,前提事実及び上記1の各認定事実に照らせば少なくとも上記侵害についての被告の過失が認められるから,原告は,被告に対し,送信可能化権侵害の不法行為に基づき著作権法114条3項により本件各イラストの著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額 の損害賠償金の支払を求めることができる。」とした上で、「本件各イラストは平成26年8月3日 から平成29年6月8日まで本件サイトに無断で転載されていた事実が認められることから ,原告が本件各イラストの使用に対し受けるべき金額は合計27万円(イラスト1点につき 1年当たりの使用料3万円×イラスト3点×掲載期間3年分)となる。また,本件における 弁護士費用相当額としては3万円もって相当と認める。」という算定方式を示し、著作権法114条3項に基づき30万円及び弁護士費用3万円の合計である33万円の損害賠償金及び遅延損害金の支払を認め、原告の請求を一部認容した。

ポイント:

 著作権法114条3項に基づく損害額(「著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」)について、各イラストの1年当たりの使用料にイラスト点数と掲載期間を乗じた額を損害額として認定した。

4. 弁護士による著作権侵害対応

(1)裁判外で警告を受けた場合

 もし著作権侵害を理由に著作権者から警告を受けた場合、1週間又は2週間というように期限が決められて、対応が求められることがあります。

 そうすると、著作権法や著作権トラブルの知識や経験がなければ、どのように対応していいかわからず、誤った判断や行動をしてしまうことがあります。例えば、著作権侵害をしていないにもかかわらず、著作権侵害の事実を認めたり、高額な金銭を支払ってしまうこともあります。また、大した問題でないと考え、放置していると、民事裁判が起こされることもあります。

 裁判外で警告を受けた場合、著作権に精通している弁護士に相談し、著作権侵害の有無や損害賠償額の相場を確認することが、思わぬデメリットを回避するためには重要です。ケースによっては、弁護士に代理交渉を依頼することも効果的です。

 弁護士に代理交渉を依頼することによって、請求された金員の減額交渉を依頼できますし、民事裁判とならないような形で交渉を依頼することもできます。また、回答書や示談書の作成も専門的な知識が必要となり、心身共に負担も大きいため、弁護士に依頼することで、その負担を軽減できます。

(2)民事訴訟になった場合

 交渉等では折り合いがつかず、訴えを提起され、民事訴訟になった場合、その対応が必要となります。民事訴訟に対応しないと、相手方の請求がそのまま認められてしまい、判決が確定してしまいます。

 訴えを提起された場合には、訴訟期日に出廷したり、証拠を精査し主張書面を作成したりしなければならず、これらを自分でやるとしても労力や時間を要しますし、著作権法や訴訟の知識や経験がなければ、困難な作業といえます。

 そのため、著作権法・訴訟対応の専門家である弁護士に依頼する方が、効率的に、また、負担が少なく解決可能です。

5. 著作権侵害について弁護士に依頼するメリット

 訴訟に発展する前後を問わず、著作権トラブルが発生した場合には、相手方と交渉し、和解することによって、トラブルを早期に解決する方が労力や時間、精神的負担、損害賠償額を抑える等メリットがあります。

 このようなトラブル対応に慣れている弁護士に依頼する方が、法的観点からも妥当な解決を図ることができるでしょう。

 著作権にまつわる交渉、訴訟対応が必要となる際には、弁護士を代理人として立て、弁護士を通じて交渉、訴訟を進めることが、結果的には当事者の負担や不利益を軽減し、より満足のいく結果を得るために効果的です。

 著作権問題は、法律問題の中でも専門性が高い分野です。そのため、著作権問題は、著作権法を中心とする専門的な知識・経験がなければ適切な対応をすることが困難です。

 その一方で、著作権問題を中心に取り扱っている弁護士であれば、著作権法に関する知識・ノウハウはもちろん、実際の著作権問題の事案対応経験もあるので、より迅速かつ効果的な対応を提案できます。

 弁護士法人かける法律事務所には、著作権問題に対応できる弁護士が在籍しています。著作権侵害で警告や訴訟提起を受けたら、まずは、ご相談してください。
 お問い合わせは、こちらです。

細井 大輔

このコラムの執筆者

代表弁護士細井 大輔Daisuke Hosoi

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