法律コラム

Q&A<法人破産・事業再生>破産管財と同時廃止の違いについて、弁護士が解説します。

2022.10.12

私は、株式会社を経営していますが、コロナ過による影響で売上が減少し、多額の借入もあるため、破産を検討しています。破産では破産管財人が選任されることがあると聞きましたが、必ず選任されますか?

破産管財人が選任される場合 (破産管財) と選任されない場合 (同時廃止) がありますが、法人破産の場合、原則として破産破産管財人が選任されます。
個人破産の場合、裁判所ごとに運用が異なりますが、資産の種類・内容や免責不許可事由の有無や程度によって破産管財人が選任されることがあります。

1. 管財事件とは?

 裁判所に破産手続が申し立てられた場合、破産手続を円滑に進めるために、「破産管財人」が裁判所から選任されるのが法律上の原則です。

 「破産管財人」とは、破産手続における中心的な役割を担い、破産者の財産の調査・管理・処分や債権者への配当、免責不許可事由の調査等を行います。破産管財人には、申立代理人 (弁護士) とは別の弁護士が新たに選任され、中立・公平な立場で手続を進めていきます。

 このように、破産管財人が選任されて破産手続が進んでいく場合を「管財事件」といわれています。

 管財事件の場合、破産管財人による財産調査等が行われるので、手続が終わるまでに一定の時間がかかり、6か月から1年以上を要するケースもあります。

 また、管財事件の場合、申立代理人 (弁護士) に支払う弁護士費用とは別に、裁判所に対して一定の予納金 (主に破産管財人に対する報酬に相当するもの) を支払う必要があります。

2. 同時廃止とは?

 「同時廃止」とは、破産手続のうち管財事件ではない事件、つまり、破産管財人が選任されずに破産できる手続のことをいいます。

 同時廃止の場合、破産管財人による調査がないため、破産手続の開始決定と同時に破産手続を終了 (廃止) することになります。

 同時廃止で破産手続を進めることができる場合、数十万円という高額な予納金を裁判所に納める必要がなく、また、破産手続が終わるまでの期間も短くなります。

3. 破産管財人が選任される場合と選任されない場合

 破産手続では、原則として破産管財人が選任されますが (管財事件) 、破産管財人が選任されない場合もあります (同時廃止) 。

 どのような場合に破産管財人が選任されるのかですが、法人の破産の場合には、必ず破産管財人が選任されるといってよいでしょう。

 また、個人破産の場合でも、一定程度の財産がある場合や免責不許可事由の存在が疑われる場合には、破産管財人が選任されることがあります。

4. 管財事件の基準

 個人破産について、管財事件になるかどうかの基準は、裁判所ごとに運用が異なりますが、例えば、大阪地方裁判所では、以下のようなケースにおいては、原則として管財人が選任されるとされています。

  1. 現預金を合計50万円を超えて所持している場合
  2. 現預金以外の個別財産 (保険の解約返戻金、不動産、自動車等) で20万円以上のものがある場合

 ①や②に当たる場合は、管財人による財産調査が必要ということで、原則として管財事件となります。

 また、上記の①や②に当たらない場合でも、免責不許可事由の存在が疑われる場合や弁護士に破産手続を依頼した後に一部の債権者にだけ返済をした場合 (偏波弁済) など、管財人による調査が必要と判断される場合には、管財事件に振り分けられることもあります。

5. 通常管財と少額管財

 多くの裁判所の運用上、管財事件については、「通常管財」と「少額管財」の2種類で区別されて運用されています。

 もっとも、「少額管財」は法律上定められている制度ではなく、東京地方裁判所によって考えられた運用で、「少額管財」の制度を設けていない裁判所も一部あります。

以下、通常管財と少額管財の違いについて、説明します。

①通常管財とは

 通常管財とは、簡単にいえば、破産管財人による調査に大きな労力がかかる場合の手続です。例えば、破産を申し立てたのが大規模な企業である事件、債権者が数百人いる等の複雑困難な事情のある事件、社会的関心が大きい事件等は、通常管財となることがあります。

 通常管財として手続が進むことになった場合、裁判所に納める予納金は50万円以上と高額になることが多いです。

②少額管財とは

 少額管財とは、簡単にいえば、破産管財人による調査にそれほど労力がかからず、低額の予納金で簡略・迅速に手続を進めることができる手続です。裁判所に破産の申し立てをする前に、申立人側で一定の調査等がなされていることが前提となっています。少額管財で破産手続を進めるためには、弁護士が代理して破産手続を申し立てる等、法律専門家が関与して申し立てることが必要となります。

 個人が破産手続を申し立て、管財事件に割り振られる場合、多くはこの少額管財となります。また、法人が破産手続を申し立てる場合にも、法人の規模がそれほど大きくなく、複雑な事情がない場合には、少額管財で進められることもあります。

 少額管財の場合、20万円前後の予納金を裁判所に納めることになります。

6. ポイント

  1. 破産手続では、管財人が選任される場合 (管財事件) と管財人が選任されない場合 (同時廃止) があります。
  2. 法人破産の場合、原則として管財人が選任されます。
  3. 個人破産の場合、裁判所ごとに運用が異なりますが、資産の種類・内容や免責不許可事由の有無や程度によって管財人が選任されることがあります。

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