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不正競争行為(混同のおそれ)と打ち消し表示

2022.11.16

非純正品を販売するインターネット広告において、純正品メーカーの社名等を記載することを検討していますが、不正競争防止法 (不競法) 上の問題はないですか?

非純正品を販売するインターネット広告において、広告記載の一部が打ち消し表示としての機能を有することを認め、不正競争行為 (不正競争防止法2条1項1号) を否定した裁判例 (知財高判令和4年1月18日) があります。この裁判例からすると、記載の内容や方法によっては、不競法上では問題がありません。

1. 不正競争行為―周知な商品表示等の主体の混同惹起 (不競法2条1項1号)

 不競法2条1項1号は、①他人の商品等表示として、②需要者の間に広く認識されているものと (周知性) 、③同一若しくは類似の商品等表示を使用し (類似性) 、④他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為 (混同のおそれ) を不正競争行為 (周知な商品表示等の主体の混同惹起) と定めています。

 これは、周知な商品等表示に化体された営業上の信用を保護するとともに、事業者間の公正な競争の確保を目的としています。

 不正競争行為と認定されると、民事上の責任 (損害賠償請求、差止請求) や刑事上の責任が発生するリスクがあります。

2. 混同のおそれの意義

 不競法2条1項1号では、「混同のおそれ」が要件となっています。

 混同には、「他人の周知の営業表示と同一又は類似のものを使用する者が自己と右他人とを同一営業主体として誤信させる行為」 (いわゆる狭義の混同) のみならず、「両者間にいわゆる親会社、子会社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信させる行為」 (いわゆる広義の混同) も含まれ、両者間で競争関係にあることを要しないとされています (最判平成10年9月10日判時1655号160頁 (スナックシャネル事件) )

 また、混同は、実際に混同が生じているケースがあれば、混同を肯定する方向に斟酌されるものの、現実に発生している必要はなく、混同が生ずるおそれがあれば足りると解釈されています。

3. 混同のおそれの判断基準

 混同のおそれの有無は、①周知な商品等の周知度、②周知な商品等表示と類似表示との類似性の程度、③周知な商品等表示主体の商品・営業と類似表示使用者の商品等の類似性の程度等を考慮して、類似表示使用者の商品等の平均的な需要者を基準として判断されます。

4. 混同のおそれと打ち消し表示

 混同のおそれを否定する事情の一つとして、混同防止のための付加表示の存在が指摘されており、打ち消し表示によって混同のおそれを否定されることもあります。

 もっとも、単に打ち消し表示を付加しただけでは、直ちに混同のおそれが否定されることはないと言われることがあります。実際、打ち消し表示があったとしても、混同のおそれを肯定する裁判例も多く存在します (東京高判平成5年3月31日【リッツショップ事件】、東京高判平成16年3月15日【ピーターラビット事件】、知財高判令和元年10月10日【タイトルタグ・メタタグ事件】) 。

5. 蛇口一体型浄水器の交換用カートリッジ商品広告事件 (知財高判令和4年1月18日) の紹介

(1) 請求内容

 控訴人は、被控訴人がインターネットショッピングモールの店舗で販売する蛇口一体型浄水器の交換用カートリッジの商品の広告に、被告表示1及び被告表示2を掲載する行為が控訴人の商品等表示として周知な黒色のゴシック体の「タカギ」の文字を横書きしてなる表示と類似する「タカギ社製」の表示を使用し、控訴人の商品又は営業との混同を生じさせる行為であり、不競法2条1項1号を根拠に損害賠償を請求した。

①被告表示1(楽天サイト)の表示
タカギ社製 浄水蛇口の交換用カートリッジ取扱い店

②被告表示2(アマゾンサイト)の表示
「タカギ社製」、「浄水蛇口の交換用カートリッジを」、「お探しの皆様へ」との3段書きの表示

(2) 争点

 被告商品のインターネット広告に被告表示1又は被告表示2を掲載した行為による被告標章 (「タカギ社製」の表示) の使用について、被告商品が控訴人製の純正品であると需要者に誤認させ、被告商品の出所又は営業主体が控訴人等であるとの混同を生じさせるか否か。

(3) 被告表示1に対する判断

ア 原告商品や被告商品の「需要者は、家庭用浄水器に適合する浄水用カートリッジが浄水器本体の製品ごとに異なることを一般的な知識として有し、家庭用浄水器の交換用カートリッジの購入を検討する際には、交換用カートリッジの浄水器本体との適合性、価格等について関心を持ち、その購入時にはこれらを確認するものと認められる。」

イ 「被告表示1の構成中の「タカギ社製」との表示 (被告標章) は、「タカギ」が製造した商品であることを示したものと理解できるところ、被告表示1においては、「タカギ社製」の文字部分と「浄水蛇口の交換用カートリッジ取扱い店」との間にスペースがあるため、「タカギ社製」の文字部分が「浄水蛇口の交換用カートリッジ」を修飾し、被告表示1から「タカギ」が製造した「交換用カートリッジ」商品の取扱い店であることを表示したものと読み取ることが可能であり、一方で、「タカギ社製」の文字部分が「浄水蛇口」を修飾し、被告表示1から「タカギ」が製造した「浄水蛇口」に適合する「交換用カートリッジ」商品の取扱い店であることを表示したものと読み取ることも可能であると一応考えられる。」

ウ しかしながら、本件楽天サイトのトップページの被告表示1の下の三段書き表示から表示画面の半分程度下方にスクロールすると、「被告商品のタイプ及び数量別の価格表示の一覧表が表示され、その直下に赤色の背景の白抜き文字の「お買い求めの前に」と題する欄に「標準タイプ・高除去タイプともに、純正カートリッジより浄水の流量が少ないですが、当社製品は、『浄水力にこだわり、じっくり“ろ過”する設計』を採用しておりますので、予めご理解の上お買い求めください。」との記載が表示されていたこと、上記「お買い求めの前に」と題する欄は、価格表示の一覧表と商品購入ページに移動するリンクボタンの間に位置し、交換用カートリッジの購入を検討する需要者の目につきやすい位置及び態様で配置されていることが認められる。」

エ 「需要者は、上記「お買い求めの前に」と題する欄記載の「標準タイプ・高除去タイプともに、純正カートリッジより浄水の流量が少ないですが、当社製品は…」との記載部分から、「当社製品」である「交換用浄水カートリッジ」が「タカギ」が製造した「純正カートリッジ」とは異なる商品であることを容易に理解するものと認められるから、上記記載部分は、被告標章 (「タカギ社製」の表示) が「浄水蛇口の交換用カートリッジ」を修飾すると読み取ることを否定する打ち消し表示としての機能を有するものと認められる。

オ 「そうすると、本件楽天サイトのトップページの被告表示1に接した需要者は、上記「お買い求めの前に」と題する欄の上記記載部分に照らして、被告表示1の構成中のタカギの表示 (被告標章) は、「浄水蛇口」を修飾し、被告表示1は「タカギ」が製造した「浄水蛇口」に適合する「交換用カートリッジ」商品の取扱い店であることを示したものと理解するものと認められる。」

カ 「以上によれば、被告表示1における被告標章の使用によって、被告商品が控訴人製の純正品であると需要者に誤認させて、被告商品の出所が控訴人又は控訴人の関連会社であるとの混同を生じさせるおそれがあるものと認めることはできないし、また、その営業主体が控訴人又は控訴人の関連会社であるとの混同を生じさせるおそれがあるものと認めることもできない。」

(4) 被告表示2に対する判断

ア 「被告表示2の上段の「タカギ社製」の文字部分 (被告標章) 及び中段の「浄水蛇口の交換用カートリッジ」の文字部分の2段の記載部分は、販売広告の対象商品と関連付けたものとして理解できる。そして、2段の上記記載部は、その構成態様から、「タカギ」が製造した「交換用カートリッジ」を表示したものと読み取ることが可能であり、また、「タカギ」が製造した「浄水蛇口」に適合する「交換用カートリッジ」を表示したものと読み取ることも可能であると一応考えられる。」

イ 「一方で、被告表示2の左上部に小さく表示された複数の画像の上に青色の文字で「【ノーブランド品】タカギの浄水器に使用できる、取付け互換性のある交換用カートリッジ…」との表示は、販売広告の対象商品が「ノーブランド品」であって、「タカギ」が製造した「浄水器」に使用できる「交換用カートリッジ」であることを説明したものと理解できる。」

 「①「ノーブランド品」とは、ブランドを掲げずに一般名称のみを記した商品を意味するものと解されること、②原告表示 (黒色のゴシック体の「タカギ」の表示) は、家庭用浄水器及びその関連商品を購入しようとする需要者の間において、控訴人の業務に係る商品を表示するものとして周知となっており」、「家庭用浄水器及びその関連商品のブランド名として理解されていたことに鑑みると、控訴人製の純正品の交換用カートリッジについて「ノーブランド品」と表示することは通常考えられないというべきであるから、本件切替え画像に接した需要者は、「【ノーブランド品】タカギの浄水器に使用できる、取付け互換性のある交換用カートリッジ…」との表示は、販売広告の対象商品が控訴人製の純正品とは異なる商品であることを示したものと理解するものと認められる。」

ウ 「そうすると、「【ノーブランド品】タカギの浄水器に使用できる、取付け互換性のある交換用カートリッジ…」との表示は、被告表示2の上段の「タカギ社製」の文字部分 (被告標章) 及び中段の「浄水蛇口の交換用カートリッジ」の文字部分の2段の記載部分が「タカギ」が製造した「交換用カートリッジ」 (控訴人製の純正品) を表示したものと読み取ることを否定する打ち消し表示としての機能を有するものと認められる。

エ 「したがって、本件アマゾンサイトの本件切替え画像の被告表示2に接した需要者は、被告表示2の上段の「タカギ社製」の文字部分 (被告標章) 及び中段の「浄水蛇口の交換用カートリッジ」の文字部分の2段の記載部分は、「タカギ」が製造した「浄水蛇口」に適合する「交換用カートリッジ」を表示したものと理解するものと認められる。」

オ 「以上によれば、被告表示2における被告標章の使用によって、被告商品が控訴人製の純正品であると需要者に誤認させて、被告商品の出所が控訴人又は控訴人の関連会社であるとの混同を生じさせるおそれがあるものと認めることはできないし、また、その営業主体が控訴人又は控訴人の関連会社であるとの混同を生じさせるおそれがあるものと認めることはできない。」

6. ポイント

  1. 他人の商品等表示として、需要者の間に広く認識されているものと (周知性) 、同一若しくは類似の商品等表示を使用し (類似性) 、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為 (混同のおそれ) は不正競争行為 (不競法2条1項1号) となります。
  2. 非純正品を販売するインターネット広告において、広告記載の一部が打ち消し表示としての機能を有することを認め、不正競争行為 (不競法2条1項1号) を否定した裁判例があります。
  3. 他人の周知又は著名な商品やサービスの名称を利用する場合、不正競争行為と指摘されないように、商品広告の記載内容を検討する必要があります。

7. まとめ

 単に打ち消し表示があるというだけでは、特段の事情がない限り、「混同のおそれ」は否定されないと指摘されていますが、知財高判令和4年1月18日は、非純正品のインターネット販売広告において、広告記載の一部が打ち消し表示としての機能を有することを認め、混同のおそれを否定しています。非純正品のインターネット販売広告の内容を検討する上では実務上、参考になります。

 しかも、この裁判例では、「打ち消し表示は、直接的、かつ、誤認を生じるおそれのある表示と同時に視認できる範囲などの分かり易い場所に記載」されなければならないという控訴人 (原告) の主張も排斥しており、打ち消し表示が直接的でなくても、混同のおそれが否定されることがあることを認めている点で、重要な意義があります。

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