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Q&A<インターネット>侮辱罪が厳罰化!今後の運用はどうなる?

2022.09.09

 法改正により侮辱罪が厳罰化され、2022年7月7日から正式に施行されました。厳罰化の内容やその背景、厳罰化によりどのように運用が変わるのかについて解説します。

 

1 侮辱罪の厳罰化

①侮辱罪とは

 侮辱罪とは、「公然と人を侮辱した」場合に成立する犯罪です(刑法231条)。名誉棄損罪とは違い、具体的な事実を摘示しない罵詈雑言(「バカ」、「クズ」等)であっても成立する犯罪です。また、親告罪であるため、被害者による告訴がなければ、起訴されることはありません。

②厳罰化の内容

 侮辱罪の法定刑は、厳罰化される以前は、「拘留または科料」にとどまっていました。拘留とは1日以上30日未満の間、刑事施設に拘置されることをいい、科料とは千円以上一万円未満のお金を納めることをいいます。

 それが、今回の法改正により「1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」に改正されました。

 このように、新たに懲役・禁固刑と罰金刑が追加され、法定刑が以前よりも重くなりました。

 この厳罰化の理由ですが、法務省(*)によれば、昨今インターネット上の誹謗中傷が大きな社会問題となっており、誹謗中傷全般に対する非難が高まっていること、また、これらの誹謗中傷に対して、法定刑を引き上げて厳正に対処し、それによって悪質な誹謗中傷を抑止することが厳罰化の背景とされています。

*法務省のウェブサイトから引用:https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00194.html

 

2 刑事手続における変更点

 また、法定刑の引き上げに伴い、侮辱罪についての刑事手続についても、一部運用が変更される部分があります。

①公訴期間の引き上げ

 法定刑の引き上げにより、公訴期間が1年から3年に変更されます。「公訴期間」とは、よく「時効」ともいわれますが、犯罪行為が行われてから検察官が起訴できる期間のことをいいます。犯罪ごとの法定刑の内容によって、公訴期間も変わります。

②逮捕手続における一部の制約がなくなる

 通常逮捕(令状による逮捕)・現行犯逮捕においては、被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由(通常逮捕の場合)や現行犯人である場合(現行犯逮捕の場合)には、捜査機関は被疑者の事情に関わらず逮捕できるのが原則ですが、被疑事実が軽微な犯罪(法定刑が30万円以下の罰金、拘留又は科料である犯罪(一部例外あり))の場合には、被疑者が定まった住居を有しない場合又は正当な理由なく出頭の求めに応じない場合に限り、逮捕することができるという例外規定が法律で定められています。

 厳罰化以前は、侮辱罪も、軽微な犯罪としてこの例外規定が適用されていましたが、今回の法定刑の変更に伴い、例外規定が適用されなくなり、逮捕手続における制限がなくなることになりました。

 

3 厳罰化の問題点

 今回の厳罰化の理由は、昨今の悪質な誹謗中傷への対処というものであり、特にインターネット上で悪質な誹謗中傷が増えている昨今の事情を踏まえると、厳罰化の目的自体は、少なくとも不合理なものではありません。

 もっとも、今回の厳罰化や、誹謗中傷に対して厳正な処分を求める社会の趨勢に乗じて、今後、過剰な検挙や処罰がなされることへの懸念は考えられます。

 一般に、とある表現行為が形式的には「侮辱」に当たるとしても、例えばそれが、公的な立場にある者への政治的批判の意味を込めた表現であるなど、正当な言論として保護されるべき場合には、侮辱罪として処罰されないと解釈されています。

 このように、表現の自由との関係で、侮辱罪によるむやみやたらな処罰は許されないものであり、厳罰化による今後の運用について、注目していく必要があります。

 

4 厳罰化に伴う注意点

 今後の運用がどのようになるかはまだはっきりしませんが、厳罰化により、これまでであれば検挙に至らなかったような侮辱行為も、厳しく検挙・逮捕されるケースが増えることも予想されます。

 特に、厳罰化の背景を踏まえると、拡散力の大きいSNS上の侮辱発言については、取締りが厳しくなる可能性があります。

 SNSを使った侮辱投稿については、それが全世界へ拡散されうるものであるという危険性を認識して、軽い気持ちで投稿をしないように認識しておく必要があります。

 

5 ポイント

1.侮辱罪が厳罰化され、懲役刑といった重い刑罰が科され得るようになった。

2.厳罰化の背景には、特にインターネット上の悪質な誹謗中傷の増加がある。

3.これまでよりも誹謗中傷に対する取締りが厳しくなる可能性があるため、情報発信には注意する必要がある。

 

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