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Q&A<インターネット>SNS上に残っている逮捕歴の投稿、消すことができる?

2022.09.06

SNS(ツイッター)で自分の名前を検索すると、実名で、過去の逮捕歴に関するツイートが表示されてしまいます。自分の今後の人生や家族の生活に影響が及ぶので、この検索結果が表示されないようにしたいのですが、可能でしょうか?

ツイートを削除するためには、いくつかの方法があります。

1 誰に対してどのような請求をするのか?

 一般に、他人に知られたくない個人情報(住所や名前、逮捕歴、病歴、精神障がいの有無等)がSNSに投稿されてしまっている場合、それらがネット上に表示されないようにする手段としては、以下の方法があります。

 ①個人情報の発信者自身(ツイートをした人等)に削除の請求を行う

 ②SNSの管理者に対して削除措置を求める

 もっとも、情報の発信者自身への削除請求については、その発信者をそもそも特定できない可能性や、仮に発信者を特定して裁判で判決を得たとしても、発信者がツイートを削除してくれない場合もあります。その場合、結果としてツイートを削除することができないこともあるので、SNSの管理者に対する削除請求を行う方法が一般的です。

 例えば、ツイッターであれば、ツイッター社のウェブサイト上に削除請求をするためのウェブフォームが設置されており、そのウェブフォームを通じて削除請求をすることができます。

 SNSではなく、例えば、インターネットの掲示板に自分の逮捕歴が公開された場合は、掲示板の管理者に対して削除請求を、まず行います。

 また、ツイッターではないですが、インターネットのウェブブラウザで自分の名前を検索すると、検索結果に自分の逮捕歴のことが表示されてしまうという場合には、その検索エンジン(グーグル等)に対して削除請求をすることもできます。

※検索エンジンに対する削除請求は、あくまでウェブサイトの検索結果を表示されないようにするものであり、個人情報が掲載されているウェブサイト自体を削除するものではありませんが、検索結果が表示されなければ、その個人情報が他人の目に触れる機会も大幅に減らせるので、大きな意味があります。

 

 このように、個人情報がどのネット媒体に公開されているかで、誰に対して削除請求をするかも変わってきます。削除請求に応じてくれるかどうかは、業者によって対応が異なるので、個人情報がどの媒体に投稿されているのかが重要です。

 

2 SNSの管理者等が個人情報を削除してくれない場合は裁判手続

 削除請求をした場合、それに応じるかどうかはSNSの管理者側の判断となるので、削除されるかどうかはケースバイケースです。

 特に逮捕歴に関していうと、住所や名前等とは違い、公共の利害に関わる情報(不特定多数の人にとって知る価値がある情報)という側面があるため、任意では削除をしてもらえないこともあります。削除に応じてもらえない場合、SNSの管理者等に対して、裁判手続によって、個人情報の削除を求めることになります。

 裁判手続によって個人情報の削除を求める場合、一般的には、「仮処分」という迅速な手続を用います。これは、訴訟(公開法廷で行われる審理)とは違い、1~2か月程度の短期間で迅速に裁判官が判断し、プライバシーや名誉の侵害が認められた場合に、SNSの管理者等に削除を命じてもらうことができる手続です。

 この仮処分は、「仮」と名前がついているように、あくまで暫定的に個人情報の削除を命じてもらう手続なので、暫定的に個人情報の削除がなされた後に、訴訟によって最終的な決着をつけるのが法的には原則となります。

 ただ、実際には、この仮処分の命令が出されることにより、SNSの管理者等が自発的に個人情報を削除し、訴訟手続に入らなくても、削除した個人情報を復活させないことにして問題が解決することが多いです。

 

3 訴訟手続によって削除が認められるための要件

 上記の仮処分に対し、訴訟手続によって、プライバシーや名誉が侵害されていることを理由に、個人情報の削除を求めることもできます。

 個人のプライバシーや名誉が侵害されていると認められれば個人情報の削除が認められますが、現在の裁判所の運用上、常に個人情報の削除が認められるわけではありません。

 どのような場合に個人情報の削除が認められるかについて、裁判例が少しずつ積み上げられてきているところですが、最近出た裁判例として、最高裁第二小法廷判決・令和4(2022)年6月24日があるため、判決内容を抜粋しながら、説明します。

 

4 最高裁第二小法廷判決・令和4(2022)年6月24日

<事案の概要>

 この裁判例の事案は、当事者である男性が、過去に旅館の女性用浴場に侵入したという被疑事実により建造物侵入罪で罰せられたところ、そのことに関する報道機関の記事がツイッター上で転載され、そのツイートが残り続けていたために、ツイッター社に対し、関係するツイートの削除を求めて裁判を起こした、という事案です。

<判決の内容>

 まず上記判決は、どのような場合にツイッター上の個人情報の削除が認められるかについて、以下のように一般論を述べました。

 「…個人のプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益は、法的保護の対象となるというべきであり、このような人格的価値を侵害された者は、人格権に基づき、加害者に対し、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができるものと解される。…そして、ツイッターが、その利用者に対し、情報発信の場やツイートの中から必要な情報を入手する手段を提供するなどしていることを踏まえると、上告人(=前科の削除を求めている男性)が、本件各ツイート(=男性の前科が掲載された各ツイート)により 上告人のプライバシーが侵害されたとして、ツイッターを運営して本件各ツイートを一般の閲覧に供し続ける被上告人(=ツイッター社)に対し、人格権に基づき、本件各ツイートの削除を求めることができるか否かは、本件事実(=男性が過去に旅館の女性用浴場に侵入して建造物侵入罪で罰せられたという事実)の性質及び内容、本件各ツイートによって本件事実が伝達される範囲と上告人が被る具体的被害の程度、上告人の社会的地位や影響力、本件各ツイートの目的や意義、本件各ツイートがされた時の社会的状況とその後の変化など、上告人の本件事実を公表されない法的利益と本件各ツイ ートを一般の閲覧に供し続ける理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもの で、その結果、上告人の本件事実を公表されない法的利益が本件各ツイートを一般の閲覧に供し続ける理由に優越する場合には、本件各ツイートの削除を求めることができるものと解するのが相当である

 このように、その個人情報が公開されないことによって守られる利益(個人のプライバシーや名誉)と、その個人情報が公開されることによる一般人にとっての利益(その個人情報を知ることができる利益)を比較して、前者の利益が後者の利益を上回る場合に、プライバシーを侵害する個人情報の削除が認められる、という内容を述べました。

 そのうえで、上記判決は、この事案の結論として、上記男性が求めたツイートの削除請求を認めました。以下、その理由となる部分を抜粋したものです。

 「本件事実は、他人にみだりに知られたくない上告人のプライバシーに属する事実である。他方で、本件事実は、不特定多数の者が利用する場所において行われた軽微とはいえない犯罪事実に関するものとして、本件各ツイートがされた時点に おいては、公共の利害に関する事実であったといえる。しかし、上告人の逮捕から 原審の口頭弁論終結時まで約8年が経過し、上告人が受けた刑の言渡しはその効力 を失っており(刑法34条の2第1項後段)、本件各ツイートに転載された報道記事も既に削除されていることなどからすれば、本件事実の公共の利害との関わりの 程度は小さくなってきている。また、本件各ツイートは、上告人の逮捕当日にされたものであり、140文字という字数制限の下で、上記報道記事の一部を転載して 本件事実を摘示したものであって、ツイッターの利用者に対して本件事実を速報することを目的としてされたものとうかがわれ、長期間にわたって閲覧され続けることを想定してされたものであるとは認め難い。さらに、膨大な数に上るツイートの 中で本件各ツイートが特に注目を集めているといった事情はうかがわれないものの、上告人の氏名を条件としてツイートを検索すると検索結果として本件各ツイートが表示されるのであるから、本件事実を知らない上告人と面識のある者に本件事実が伝達される可能性が小さいとはいえない。加えて、上告人は、その父が営む事業の手伝いをするなどして生活している者であり、公的立場にある者ではない。」

<判決のポイント>

 このように、上記判決は、様々な個別的な事情を考慮して、逮捕歴のツイートの削除を認めました。ただ、この判決は、あくまでこの事案の様々な個別的な事情を総合的に考慮して出されたものであり、最終的にはケースバイケースで判断されます。

 例えば、この事案と異なり、公開されていた情報が過去の前科ではなく、家庭内の私事や単なる日常生活の行動だった場合、あるいは、この男性が政治家等の公的立場にある者であった場合には、結論は異なっていた可能性があります。

 

5 ポイント

1.他人に知られたくない個人情報が公開されている場合、削除請求の方法は、「SNSの管理者やウェブサイトの管理者に直接、削除請求を求める方法」が一般的であり、仮に任意での削除に応じてもらえない場合は、裁判手続が必要となる。

2.削除請求の対応は業者ごとに異なるため、どの媒体に個人情報が公開されているかが重要。

3.裁判手続によって削除を求める場合、削除が認められるには一定の要件を満たす必要があり、削除が認められるかどうかは、個人情報の性質や社会的影響の程度によってケースバイケースといえるが、逮捕歴の投稿の削除を認めた最高裁判決もある。

 

6 弁護士法人かける法律事務所(”KLPC”)のサービスのご案内

 弁護士法人かける法律事務所(”KLPC”)では、インターネット上の個人情報の削除や発信者の情報開示請求の相談を随時受け付けており、実際に当事務所が代理人となって、訴訟手続を行わず、ツイッター上の個人情報の削除に成功した事例もあります。

 削除請求が可能かどうかの見立てや、弁護士費用のお見積りについては、丁寧にご説明させていただきますので、ぜひご相談ください。

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