法律コラム

顧問弁護士は本当に必要?中小企業が顧問契約を検討すべきタイミング

「顧問弁護士は大企業が契約するものではないか」
「自社にはまだ必要ないのではないか」

このような疑問を持つ中小企業の経営者の方は少なくありません。

確かに、顧問弁護士というと大企業や上場企業が利用するサービスというイメージを持たれることもあります。しかし、近年では企業を取り巻く法的リスクが多様化しており、むしろ法務部門を持たない中小企業だからこそ、日常的に法律相談ができる体制を整えることが重要になっています。

もちろん、すべての企業が顧問契約を結ぶ必要があるわけではありません。大切なのは、自社の事業規模や経営状況に照らし合わせて、本当に必要なタイミングを見極めることです。

今回は、中小企業にとって顧問弁護士が必要になる場面や、顧問契約を検討すべき企業の特徴について解説します。

中小企業でも法務リスクは身近にある

企業経営では、日々さまざまな意思決定が行われています。その中には、一見すると法律とは関係がないように思えるものでも、実際には法的な判断が必要になるケースが数多くあります。

例えば、次のようなケースです。

  • 雇用契約書の作成
  • 就業規則の整備
  • 問題社員への対応
  • ハラスメントへの対応
  • 取引先との契約締結
  • 売掛金の回収
  • 顧客からのクレーム対応

こうした問題は、大企業だけでなく中小企業でも日常的に発生します。

特に近年は、働き方改革関連法をはじめとする労働法制の改正や、ハラスメント防止措置の義務化など、企業が対応すべき法令が増えています。「知らなかった」では済まされない場面も多く、対応を誤れば労使紛争や損害賠償請求、企業イメージの低下につながる可能性があります。

また、インターネットやSNSの普及により、一つのトラブルが短期間で広く拡散する時代になりました。以前であれば社内だけで収まっていた問題でも、企業の信用問題へ発展するケースも珍しくありません。

法務リスクは、何か大きな事件が起きたときだけに生じるものではなく、日々の業務の中に潜んでいます。そのため、問題が起きてから対応するのではなく、日頃からリスクを把握し、未然に防ぐことが重要です。

「顧問弁護士は大企業だけ」という誤解

顧問弁護士について、「大企業だから契約できるもの」「中小企業には縁がないもの」と考える方もいます。

しかし、実際にはそのイメージとは異なります。

大企業には法務部門や法務担当者が配置され、契約書の確認や法律相談を社内で行える体制が整っていることが一般的です。一方で、中小企業では法務担当者を置くことが難しく、経営者や総務担当者が法律的な判断を担っているケースが少なくありません。

中小企業にとって顧問弁護士は、「社外法務部」のような存在です。

例えば

  • この契約書の内容で問題はないか
  • 従業員への対応は適切か
  • このような対応をすると法的な問題はないか

といった日常的な相談を気軽に行えるため、経営者だけで判断することによるリスクを軽減できます。

また、問題が発生してから弁護士を探す場合と比べて、自社の事業内容や組織体制を理解している顧問弁護士であれば、状況を一から説明する必要が少なく、迅速な対応が期待できます。

つまり、顧問弁護士は企業規模で必要性が決まるものではなく、「法務を相談できる体制があるかどうか」が重要なのです。経営者が安心して意思決定を行うための相談相手として、日常的に活用できることこそ、顧問契約の大きな価値といえるでしょう。

顧問契約を検討した方がよい企業の特徴

では、どのような企業が顧問契約を検討すべきなのでしょうか。ここでは代表的なケースを紹介します。

① 従業員が増えてきた

従業員数が増えるほど、人事・労務に関する問題も増えていきます。

例えば

  • 採用時の雇用契約
  • 労働条件の変更
  • 休職や復職への対応
  • 懲戒処分
  • 退職勧奨
  • ハラスメントへの対応

など、法的な判断を求められる場面は少なくありません。

初期対応を誤ると、労働審判や訴訟へ発展する可能性もあります。そのため、従業員が増えてきた段階は、顧問契約を検討する一つのタイミングといえるでしょう。

② 契約書を取り交わす機会が多い

事業が成長すると、新規取引先との契約も増えていきます。

契約書には、自社にとって不利な条件が含まれていることもあり、内容を十分に確認しないまま締結してしまうと、後々大きなトラブルにつながることがあります。

契約締結前に弁護士へ相談できる環境があれば、リスクを把握した上で契約を進められるため、紛争を未然に防ぐことにつながります。

③ 労務問題や人事対応が増えてきた

残業代請求への対応、問題社員への対応、休職・復職の判断、解雇の可否など、人事・労務の問題には法律上のルールが数多く存在します。

インターネット上には多くの情報がありますが、自社の状況にそのまま当てはまるとは限りません。

日常的に相談できる顧問弁護士がいれば、個別の事情を踏まえた助言を受けながら対応を進められるため、不要なトラブルを防ぎやすくなります。

④ 取引先とのトラブルやクレーム対応がある

事業を継続していると、取引先との契約トラブルや顧客からのクレーム対応が必要になることがあります。

初動対応を誤ると問題が拡大し、解決までに時間や費用がかかるケースも少なくありません。

顧問弁護士がいることで、状況に応じた適切な対応方針を早い段階で検討でき、必要に応じて代理人として交渉や法的手続を進めてもらうこともできます。

⑤ 法改正への対応が必要になってきた

企業を取り巻く法律は、毎年のように改正されています。

特に労働関係法令は改正の頻度が高く、就業規則や社内制度の見直しが必要になることもあります。

法改正への対応が遅れると、知らないうちに法令違反となってしまう可能性もあります。

継続的に相談できる顧問弁護士がいれば、法改正に応じたアドバイスを受けながら適切に対応することができます。

⑥ 経営判断をする機会が増えてきた

事業の成長に伴い、

  • 新規事業への進出
  • 重要な契約の締結
  • M&Aや事業承継
  • 新しいサービスの開始

など、法的な検討を伴う経営判断が増えてきます。

こうした場面で、気軽に相談できる顧問弁護士がいることは、迅速かつ安心して意思決定を行うための大きな支えになります。

顧問契約がなくてもよいケースとの違い

一方で、すべての企業が顧問契約を結ぶ必要があるわけではありません。

  • 創業間もなく取引件数も少ない
  • 従業員がおらず労務管理が発生しない
  • 契約書を取り交わす機会がほとんどない

上記のような場合は、必要に応じてスポットで弁護士へ相談する方法でも十分対応できることがあります。

また、法律相談をする機会が年に一度あるかないかという企業であれば、顧問契約よりもスポット相談の方が費用対効果に優れている場合もあるでしょう。

一方で

  • 判断に迷うことが増えてきた
  • 法律相談をする機会が年に何度もある
  • トラブルが起きるたびに弁護士を探している

といった状況であれば、顧問契約を検討する価値があります。

顧問契約を結ぶことで、相談のハードルが下がり、小さな疑問の段階で専門家へ相談しやすくなります。実際には、「この対応で問題ありませんか」「メールを送る前に一度見てもらえますか」といった、日常業務の小さな相談が、大きなトラブルの予防につながることも少なくありません。

重要なのは、「顧問契約が必要かどうか」ではなく、「自社の経営状況に合った法務体制を整えられているか」という視点で考えることです。

まとめ

顧問弁護士は、トラブルが発生した後に対応するためだけの存在ではありません。企業経営に伴う法務リスクを未然に防ぎ、安心して事業を継続するためのパートナーとしての役割を担っています。

  • 従業員が増えてきた
  • 契約書を扱う機会が多い
  • 労務問題や人事対応が増えてきた
  • 取引先とのトラブル対応が発生しやすい
  • 法改正への対応が必要

このような状況の企業では、顧問契約を検討する意義は大きいといえるでしょう。

一方で、創業間もない企業や法律相談の機会が少ない企業では、スポット相談という選択肢が適している場合もあります。

顧問契約を結ぶべきかどうかは、一律に決められるものではありません。現在の事業規模や相談頻度、抱えている課題などを踏まえ、自社に適した法務体制を整えることが重要です。

顧問契約は、トラブルが起きてから利用するサービスではなく、企業が安心して経営判断を行い、本来の事業に集中するための「法務体制づくり」の一つです。

弁護士法人かける法律事務所では、中小企業の皆さまの顧問弁護士として、日常の法律相談をはじめ、契約書のチェック、労務問題への対応、取引先とのトラブル対応など、企業経営に関する幅広い法務をサポートしています。

「顧問契約が自社に必要なのか分からない」「スポット相談と顧問契約のどちらが適しているのか相談したい」という段階でも構いません。貴社の事業内容や組織体制、ご相談内容を踏まえ、最適な法務体制をご提案いたします。まずはお気軽にご相談ください。

細井 大輔

このコラムの執筆者

代表弁護士細井 大輔Daisuke Hosoi

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