
よくある相談
- 業務完了後に請求書を提出してもらい、「請求書受領日から60日以内」に支払う運用にしています。この方法でも問題はありませんか?
- 社内の検収手続に時間がかかるため、実際の支払は業務完了から2〜3か月後になることがあります。フリーランスも特に問題にしていませんが、法的な問題はありますか?
- 支払サイトを「月末締め翌々月払い」としており、結果として業務完了から60日を超えることがあります。業界では一般的な支払条件ですが、フリーランス新法との関係で問題はありますか?
勧告事例の概要
2026年2月27日、公正取引委員会は、電力関連事業を行う事業者に対し、フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)に基づく勧告を行いました。
本件では、当該事業者がフリーランスとの取引において、報酬の支払期日に関するフリーランス新法の規定に違反していたことが問題となりました。
公正取引委員会の調査によれば、当該事業者は、令和6年11月1日から令和7年9月17日までの間、特定受託事業者2名に対して業務委託を行っていました。そして、フリーランスから役務の提供を受けた日から起算して、60日を超える報酬の支払期日を設定していました。
さらに、実際の支払についても、役務の提供を受けた日から起算して60日を経過する日までに報酬が支払われていないケースが確認されたとされています。
フリーランス新法では、発注事業者は、フリーランスから成果物の納品や役務の提供を受けた日から起算して、60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を定め、その期日までに報酬を支払う義務を負っています。
今回の事例では、この「支払期限ルール」に違反する取引が行われていたとして、公正取引委員会が是正を求める勧告を行いました。
この勧告は、フリーランスとの取引において、報酬の支払管理が法令に適合しているかが厳しく確認される可能性があることを示した事例として注目されています。
公正取引委員会による勧告事例の詳細は、こちら
違反行為の解説―フリーランス新法における「報酬支払期限(60日ルール)」―
今回の勧告事例のポイントは、フリーランス新法における「報酬の支払期限」に関するルールです。
フリーランス新法では、発注事業者は、フリーランスから成果物の納品や役務の提供を受けた日から起算して、60日以内のできる限り短い期間内に報酬の支払期日を定め、その期日までに報酬を支払わなければならないとされています。
このルールは、フリーランスとの取引において、発注事業者側の都合によって支払が不当に遅れることを防ぐために設けられたものです。
重要なのは、支払期日の起算点が「請求書の提出日」や「社内の検収完了日」ではなく、フリーランスから役務の提供を受けた日(又は成果物を受領した日)を起算点とするという点です。
例えば、次のような運用は、実務上よく見られますが、フリーランス新法との関係では注意が必要です。
- 請求書受領日から60日以内に支払う
- 社内検収完了後に支払期日を設定する
- 月末締め翌々月払いなどの長い支払サイトを設定する
これらの運用によって、結果として役務提供日から60日を超えて報酬を支払うことになる場合には、フリーランス新法に違反する可能性があります。
今回の勧告事例は、発注事業者が設定した支払期日そのものが60日を超えていた点、さらに実際の支払も60日以内に行われていなかった点が問題視されたものといえます。
フリーランスとの取引を行う企業においては、契約書や発注書の内容だけでなく、社内の支払管理体制や会計処理の運用が、フリーランス新法の支払期限ルールに適合しているかを確認しておくことが重要といえるでしょう。
企業が注意すべきポイント
今回の勧告事例から分かるとおり、フリーランス新法では、報酬の支払期日についても明確なルールが定められています。企業としては、次のような点を改めて確認しておくことが重要です。
ポイント①支払期日の起算点を正しく理解する
フリーランス新法では、報酬の支払期日は、フリーランスから役務の提供を受けた日(又は成果物を受領した日)から起算して60日以内に設定する必要があります。
そのため、
- 請求書の提出日
- 社内検収の完了日
- 業務報告書の提出日
などを基準として支払期日を設定している場合、結果として役務提供日から60日を超えてしまう可能性があります。まずは、自社の支払管理の起算点が法律に適合しているかを確認することが重要です。
ポイント②支払サイト(支払条件)が60日を超えていないか確認する
企業の取引条件として、
- 月末締め翌々月払い
- 検収後翌月末払い
- 請求書受領後60日払い
といった支払サイトが設定されていることがあります。しかし、これらの支払条件によって結果として役務提供日から60日を超える場合には、フリーランス新法に違反する可能性があります。業界慣行として長い支払サイトが採用されている場合でも、フリーランス新法の観点から見直しが必要になる可能性があるため注意が必要です。
ポイント③契約内容だけでなく、実際の支払運用を確認する
フリーランス新法では、契約書や発注書に記載された支払条件だけでなく、実際の支払運用が法律に適合しているかも重要なポイントとなります。
例えば、
- 社内承認手続が長期化している
- 経理処理の関係で支払が遅れている
- 検収手続に時間がかかっている
といった事情によって、結果として60日以内に支払が行われていない場合には、法違反となる可能性があります。そのため、契約書の内容だけでなく、社内の発注フローや支払管理体制が法律に適合しているかを確認しておくことが重要といえるでしょう。
フリーランス新法対応は、実務点検から始まります
今回の勧告事例からも分かるとおり、フリーランス新法への対応は、契約書の形式的な修正だけで完結するものではありません。報酬の支払期日の設定や支払管理の方法など、発注から支払までの実務運用全体が法令に適合しているかが問われます。
特に、企業の会計処理や支払サイトの設定によっては、意図せず役務提供日から60日を超えて報酬が支払われてしまうケースもあります。従来の取引慣行や社内ルールが、そのままではフリーランス新法の違反リスクにつながる可能性があるため、発注フローや支払管理体制を含めた実務点検が重要といえます。
弁護士法人かける法律事務所では、フリーランスとの取引を行う企業に向けて、フリーランス新法対応に関するご相談を承っております。
- 業務委託契約・発注書のリーガルチェック
- 報酬支払条件や支払サイトの適法性点検
- 発注フロー・支払フローの見直し支援
- 社内研修の実施
- 公正取引委員会対応のサポート
「自社の支払条件が法律に適合しているか確認したい」「支払サイトや社内運用に問題がないか点検したい」といった段階からでもご相談いただけます。フリーランス新法への適切な対応を通じて、企業とフリーランス双方が安心して取引できる体制づくりを支援いたします。お気軽にお問い合わせください。
